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選挙の供託金「世界一高くても合憲」 男性の請求棄却、東京地裁
宇都宮健児弁護士(5月24日、編集部撮影、東京都)

選挙の供託金「世界一高くても合憲」 男性の請求棄却、東京地裁

2014年の衆院選で、供託金300万円を用意できず立候補が認められなかった埼玉県の自営業男性(50代)が供託金制度は違憲だとして、国に慰謝料など300万円を求めて起こした国賠訴訟で、東京地裁(杜下弘記裁判長)は5月24日、男性の請求を棄却した。男性は控訴する方針。

衆院選の供託金は、公職選挙法92条1項1号に定められている。判決では、供託金制度について「立候補の自由に対する事実上の制約」と評価しながらも、国会の裁量権の範囲内などとして、違憲ではないと判断した。

男性側は、供託金制度は(1)立候補の自由を保障した憲法15条1項、(2)国会議員の資格について財産や収入による差別を禁じた憲法44条ただし書きに違反するなどと主張。財産を持たない人が議会に進出するのを抑制していると訴えていた。

判決後の会見で、男性の代理人を務めた宇都宮健児弁護士は、「三権分立においては、司法は国民の基本的人権を守る観点で立法や行政をチェックする。その役割を果たそうという意気も気概も感じられなかった」と判決を批判した。

●先進国では供託金なしが多数派、減額の議論も

国は供託金について、売名目的の立候補などを防ぐ目的があると主張し、今回の裁判でも認められた。

一方で、海外には供託金がない国も珍しくなく、立候補者の濫立で選挙が混乱しているわけでもないようだ。男性側の調査によると、OECDに加盟する35カ国中、供託金制度が存在する国は12カ国でむしろ少数派だという。

フランスやカナダでは今世紀に入ってから供託金が廃止されており、供託金があっても韓国のように金額が引き下げられている国もあるそうだ。

男性側によると、日本は供託金が世界一高い。国会でも減額の議論がないわけではなく、2008年には、国政選挙の供託金を3分の1減額する公職選挙法改正法案が衆院を通過したこともあった。しかし、衆院解散に伴い、廃案になったという経緯がある。

男性は予備的主張として、供託金の高さも問題視したが認められなかった。

●「泡沫」候補の取材を続ける畠山さんはどう見た?

選挙で当選ないしは一定の得票を取れば、供託金は返還される。とはいえ、大金を集めるのは大変だし、そもそも選挙はお金がかかる。没収リスクを考えれば、立候補のハードルは高くなり、多様性が失われてしまう側面もある。

「泡沫」と呼ばれる候補の取材を続け、『黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い』(2017、集英社)などの著書がある畠山理仁さんは、弁護士ドットコムニュースの取材に対し、判決の感想を次のように語った。

「泡沫候補や売名目的と決めつけて、あらかじめ除外してしまうのはおかしいのではないか。その判断は有権者がするのが、民主主義のあり方として真っ当なのではないか」

「たとえば、4月の統一地方選では、定員割れや無投票など、なり手不足も問題になった。立候補者の多様性が失われると、投票率も下がる。立候補のハードルを下げることも検討すべきではないか。新規参入がない業界は廃れて、質が確保できなくなる」

(弁護士ドットコムニュース)

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