自動販売機に取り忘れたお釣りがあったとしたら、あなたはどうするだろうか。たとえ10円や100円でも警察に届けるだろうか。
小学生の中には、「宝探し」気分で自販機にお金がないか真剣に探し回る子どもたちもいるようだ。彼らは地べたに手をついて自販機の下を覗いたり、お釣りの取り忘れはないかと返却口を確認したりする。そして、お金がないと分かると、つぎの自販機へと向かうのだ。
「小学生のころに『この間は10円みつけた!』と戦利品自慢をする同級生がいた」、「大きな声でいえないが、子どものころにやっていた」などの声もある。
しかし、自販機の下や返却口に落ちているお金は、だれのものなのだろうか。お金を拾って自分のものにしてしまうことは、犯罪にあたらないのだろうか。田村ゆかり弁護士に聞いた。
●拾ったお金を警察に届けなかったらどうなる?
「法律では、落とし物を拾ったら速やかに、拾ったものを落とした人に返すか、警察に提出しなければいけないと決まっています。
これを守らずに、落としものを自分のものにしてしまうと、遺失物を横領したとして、1年以下の懲役または10万円以下の罰金、もしくは科料(金額は1000円以上1万円未満)に処せられます」
田村弁護士はこのように説明する。つまり、自販機でみつけたお金をネコババしたら、「遺失物横領罪」という、いかめしい名前の犯罪になってしまうということだ。
では、小学生の場合も「犯罪」になってしまうのだろうか。
「小学生は20歳未満なので、『少年』(少年法第2条第1項)に当たります。犯罪になりうる点は成人と同様ですが、成人の場合とは異なる手続きが取られます」
どのような手続きが取られるのだろうか。
「警察官は、14歳未満で刑罰法令に触れる行為をしたと疑われる少年を発見した場合は事件について調査することができます(少年法第6条の2第1項)。
また、調査の結果、家庭裁判所に対して通告されたり(少年法第6条第1項)、家庭裁判所の審判に付されたりする場合もあります(少年法第3条第1項第2号)。
いずれにせよ、子どもだからといって犯罪にならないわけではなく、保護者はもちろん、警察や裁判所が関与する事態になりうるということです」
小学生の「宝探し」が思わぬ事態に発展することもあるということだ。
●ちゃんと警察に届けたら「ご褒美」がある
では、もしも子どもたちが拾ったお金をちゃんと警察に届けた場合はどうなるだろうか。
「警察にお金を届けても、誰が落としたかすぐには分からないことがほとんどです。そこで警察は、現金が拾われた日時・場所などを警察のホームページ等で発表し、落とした人を探します。
そして、落とした人が判明した場合、お金を拾った人は、拾った金額の5~20%を報労金としてもらえることになっています。また、警察が発表してから3カ月たっても落とした人が判明しない場合、拾った人が全額もらえます」
お金を警察に届けて、一定期間落とし主が判明しない場合は、全額が自分のものになるわけだ。
落とし物は警察へーー。子どもだけではなく、大人もあらためて心に刻んでおくべきだろう。