夫婦別姓を求める新たな訴訟が起こされた。東京都文京区の出口裕規弁護士と妻の40代女性が8月10日、立法府が選択的夫婦別姓を認める法改正を怠ったことによって精神的苦痛を受けたとして、国を相手取って損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。
出口弁護士と女性にはそれぞれ、以前結婚していた相手との間に子どもがいる。2人は結婚する際に子どもの姓に不自由が生じることから、葛藤したという。出口夫妻は同日、東京・霞が関の司法記者クラブで会見、出口弁護士は「民法750条の夫婦同氏強制は、初婚しか想定していない」と話した。
●夫婦同姓の再婚は、小学生から中学生の多感な子どもたちへ影響
訴状などによると、出口弁護士と女性は再婚同士という。女性は以前、結婚していた際に子ども2人が生まれたが、離婚。協議の末、女性が親権を持つ代わりに、子ども2人は前の夫の姓を名乗ることになったが、母子3人で生活しているため、子ども2人は自らの意思で氏の変更が可能な15歳になったら、ともに女性の旧姓に変更することを希望していた。
しかし、女性が出口弁護士と再婚した際、民法750条の夫婦同氏の規定により、出口姓となったことから、子ども2人が女性の旧姓に変更することは困難になった。また、出口弁護士にも前の妻との間に子どもがおり、それぞれ小学生から中学生の多感な時期になる。別姓で再婚した方が、子どもの心情にも影響は少ないという「心の機微があった」という。
訴えでは、こうした夫婦の葛藤を解消する最良策は「選択的夫婦別姓」しかないが、立法措置を国が長期間怠っているため、不利益を被っていると主張。個人の尊厳と両性の平等を定めた憲法24条1項などに違反するとしている。
会見で出口弁護士は、「夫婦同氏は初婚しか想定されていない。初婚同士であれば、お子さんの名前も同じであり、過ごしやすいと思うが、再婚同士で連れ子がいた場合は様相を異にします」として、選択的夫婦別姓をあらためて求めた。
夫婦別姓を求める訴訟は今年1月、ソフトウェア企業「サイボウズ」の社長、青野慶久氏らが戸籍法上の問題を指摘して、東京地裁に提訴。また、2015年に最高裁まで争われた夫婦別姓訴訟の弁護団が5月、別姓の婚姻届が受理されないのは「信条」の差別にあたるなどとして、東京地裁と立川支部、広島地裁の3カ所で同時に提訴、第二次夫婦別姓訴訟を起こしている。
6月には、アメリカで法律婚をしたにもかかわらず、日本の戸籍に婚姻が記載されないのは、立法に不備があるとして、映画監督の想田和弘さんと舞踏家で映画プロデューサーの柏木規与子さん夫妻が婚姻関係の確認などを求めて東京地裁で提訴。今回の訴訟で、夫婦別姓を求める裁判は4件目となる。