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宿泊男性が堂々「女湯のぞき」、逃走後に問い詰められても否認…旅館の責任は?
いらすとや

宿泊男性が堂々「女湯のぞき」、逃走後に問い詰められても否認…旅館の責任は?

楽しい旅行でトラブルに巻き込まれたことはありませんか。都内で働くカオリさん(仮名・20代女性)は土日休みに北陸に温泉旅行に行ったところ、女湯で覗き見の被害にあい、「今もモヤモヤしている」と話します。

カオリさんは旅館で夕食を食べ終わった午後9時ごろ、女湯に一人で入りました。髪と体を洗い終え、お湯に浸かろうと振り向いたところ、洗い場に入るドアから覗き込んでいる男性とバッチリ目があいました。

「最初に目があった時は、『なんで男性がここにいるの?』と硬直してしまい、声を出すこともできませんでした。浴衣を着ていたので宿泊客だと思うのですが、すぐにバタバタと音を立てて急いで出て行きました」

風呂場前の廊下など、旅館には防犯カメラがなく、男を目撃したのもカオリさんだけという状況。翌日の朝食時に犯人らしき人を見つけて支配人に心当たりがないか聞いてもらいましたが、「その時間は風呂にいなかった」と否定され、何もわからないまま宿を去ったそうです。

こうした覗きや盗撮事件が起きた場合、宿泊施設側の責任を問えるのでしょうか。また覗きの場合、被害者は立証するためにどういったことを心がける必要があるのでしょうか。富永 洋一弁護士に聞きました。

●覗き行為も盗撮も、当然犯罪

こうした覗きや盗撮事件は、どういった罪になりますか。

「覗き行為も盗撮も、当然犯罪となります。

まず、女湯など、男性客が立ち入ることが禁止されている場所への『立ち入り行為』について、建造物侵入罪(刑法130条)が適用されます。次に覗き行為も盗撮も、各都道府県が定める迷惑防止条例に違反することになります。他にも覗き見の罪として、軽犯罪法にも違反します。

ただし、これらは犯人の話です。宿泊施設となると、犯人の覗き行為や盗撮に関与したのでなければ、これらの罪に問われることはないでしょう」

●防止策が取られていなかった場合、義務違反を問える可能性も

では、宿泊施設側に民事で損害賠償責任を問えるのでしょうか。

「近年、特に公衆浴場などでの盗撮問題が社会問題となっている今日においては、盗撮されないという宿泊客の利益は宿泊施設においても十分に配慮されるべきです。

例えば、その宿泊施設において、覗きや盗撮が容易な構造となっていたり、実際に覗きや盗撮事件が度々起きていることを知りながら、特に何らの防止策も講じなかったような場合には、防止策を講じるべき義務違反があったといえそうです」

●自ら警察へ110番通報を

宿泊施設には防犯カメラもなく、カオリさんは「追いかける方がよかったのかな」と話しています。こうした覗きや盗撮にあった場合、どう対応すべきなのでしょうか。

「犯人もすぐに逃げるでしょうから立証は難しい場面も多いと思いますし、恐怖心からすぐに対応すること自体が困難なケースもあるでしょう。

宿泊客としてできることは、そのような状況下で、施設のフロントや警察への通報をできるだけ急ぐほかないように思います。施設が警察に通報するとは限らないので、施設に任せきりにせず自ら警察へ110番通報したほうがよいかもしれません」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

富永 洋一
富永 洋一(とみなが よういち)弁護士 ありあけ法律事務所
東京大学法学部卒業。平成15年に弁護士登録。所属事務所は佐賀市にあり、弁護士1名で構成。交通事故、離婚問題、債務整理、相続、労働事件、消費者問題等を取り扱っている。

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