全国各地の弁護士会に「特定の団体」から、本来の趣旨を逸脱した懲戒請求が多数届いているとして、日弁連は12月25日、「市民の方々には、弁護士懲戒制度の趣旨について更なるご理解をいただくようお願いする」という中本和洋会長の談話を発表した。
談話によると、全国の21弁護士会に対して、800人超から所属弁護士全員の懲戒を求める書面が送られて来ているという。
懲戒制度は本来、弁護士の非行を糾すもの。しかし、今回のケースでは弁護士会の意見への反対、批判のために利用されているようだ。中本会長は、12月下旬の日弁連理事会で、「懲戒請求として取り上げることは相当ではない」との考えを各弁護士会の会長に伝えたという。
その上で、市民に対し、懲戒請求の趣旨について「更なるご理解をいただくようお願いする」と述べている。
●全国各地における弁護士会員多数に対する懲戒請求についての会長談話
近時、当連合会や弁護士会が一定の意見表明を行ったことについて、全国の21弁護士会に対して、800名を超える者から、その所属弁護士全員を懲戒することを求める旨記載した書面が特定の団体を通じて送付されてきている。これらは、懲戒請求の形をとりながらも、その内容は弁護士会活動に対して反対の意見を表明し、これを批判するものであり、個々の弁護士の非行を問題とするものではない。弁護士懲戒制度は、個々の弁護士の非行につきこれを糾すものであるから、これらを弁護士に対する懲戒請求として取り上げることは相当ではない。私は、本年12月21、22日開催の当連合会理事会において、各弁護士会の会長である当連合会理事にこの旨をお伝えした。各弁護士会においてしかるべく対処されることを期待する。
弁護士懲戒制度は、基本的人権を擁護し社会正義を実現することを使命とする弁護士の信頼性を維持するための重要な制度である。すなわち、弁護士は、その使命に基づき、時として国家機関を相手方として訴えを提起するなどの職務を行わなければならないこともある。このため、弁護士の正当な活動を確保し、市民の基本的人権を守るべく、弁護士会には高度の自治が認められているのであって、当連合会及び弁護士会による弁護士の懲戒権はその根幹をなすものである。
当連合会は、この懲戒権を適正に行使・運用しなければならない責務が存することを改めて確認するとともに、市民の方々には、弁護士懲戒制度の趣旨について更なるご理解をいただくようお願いする。
2017年(平成29年)12月25日
日本弁護士連合会
会長 中本 和洋