「お小遣いがもらえる」「お金に困って…」。そんな理由で、誘われるがままに自分名義の銀行の口座を売ってしまったら、どうなるのでしょうか。弁護士ドットコムの法律相談コーナーにも、「実は知人が銀行の口座をネットで売ってしまい、相手から3万円の入金がありました。カードは渡していないが、どのような罪になるでしょうか?」といった、口座売買についての悩み相談がよく寄せられています。
最近、金融機関の口座や携帯電話の不正売買が増えていると報道されました。毎日新聞(11月5日配信)によると、今年1月から6月に検挙された人数は1583人にのぼり、統計を取り始めた2007年以降の同期比で最多でした。口座や携帯電話の売買を「お小遣い稼ぎ」感覚で販売するケースが多いそうです。
気軽に銀行口座や携帯電話を売ってしまうと、どのようなことに使われる恐れがあり、どのような罪に問われるのでしょうか。正木健司弁護士に聞きました。
●振り込め詐欺などに悪用される可能性
そもそも、金融機関の口座や携帯電話の売買は許されない?
「自己名義の金融機関の口座や携帯電話を他人に売買してはいけません。
このようなことをしてしまった場合、振り込め詐欺業者や特殊詐欺業者に自己名義の口座や携帯電話を利用され、その口座が振り込め詐欺等の振込先になることや、詐欺行為を行う際に当該携帯電話を使用されるなど、詐欺業者の犯罪ツールとして利用される可能性が非常に高いからです。
また、仮に自己の口座が詐欺行為に利用された場合、金融機関によって当該口座が口座凍結され、自己の口座が使用できなくなるほか、今後、当該金融機関ひいては、他の金融機関においても、口座開設することが出来なくなるおそれが極めて高く、自己名義の口座を他人に売買することによる不利益は、甚大なものになります」
では、口座や携帯電話を売ってしまったら、どのような罪に問われるのでしょうか?
「もし、自己名義の口座や携帯電話を他人に売ってしまった場合、刑法上の詐欺罪の共犯や、犯罪による収益の移転防止法に関する法律により、懲役刑に処せられるおそれがあります」
軽い気持ちで売ってしまったら、犯罪に転用されるだけでなく、自身も罪に問われる可能性があるそうです。絶対にやめましょう。