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2016年05月30日 10時19分

「メディアは両論併記ではなく、議論の場を作るべき」GoHooが「憲法9条」シンポ

「メディアは両論併記ではなく、議論の場を作るべき」GoHooが「憲法9条」シンポ
日本報道検証機構の楊井人文代表

昨年の安保法制の成立をめぐる議論の過程で注目を集めた「憲法9条」。今後、憲法改正論議が進めば、憲法9条の扱いをめぐって、大きな議論が起きる可能性は高そうだ。

そうした状況を見越して、マスコミ誤報検証サイト「GoHoo」を運営する日本報道検証機構の楊井人文(やない・ひとふみ)代表は、改憲と護憲の立場の有識者を集めたシンポジウム「公開熟議 どうする? 憲法9条」(6月8日午後6時、日本プレスセンタービル10F)を企画。「憲法9条について対話と熟議の場を作り、メディアに一石を投じる」と題するクラウドファンディングで支援者を募っている(企画の詳細は「GoHoo」の記事 http://gohoo.org/16050901/に掲載)。

元新聞記者で、弁護士の楊井氏には、マスメディアの憲法9条問題の報じ方に対する危機感があったという。

「反対派は『戦争ができる国になる』と繰り返し、賛成派は反対派を日本の安全、平和の足を引っ張る『売国奴』と言う。メディアも対話の場をつくらないから、どの両極にも属していない大半の国民が置いてけぼりになっている」

メディアは憲法9条の議論にどう向き合うべきなのか、楊井氏に聞いた。

●メディアは分かりやすい対立構造を取り上げがち

――報道のどこに問題があるのでしょうか?

マスメディアは公共的な議論の場を提供する役割があったはずです。しかし、新聞を含めて、自分たちの社論にこだわる傾向が強く、中立性が弱くなっています。最近「かたよってなんぼ」と開きなおる傾向が強まっていますよね。そうなると、自分たちの考え方に近いものばかりを採用することになります。自分の考え、異なる立場への見方が間違っているかもしれないと気づく機会がなくなってしまうんです。

新聞の読者はもちろんですが、ネットもよっぽど意識的でないと、自分とは違う立場の記事は読まないですよね。しかも、ネットだと面と向かっては言えないような批判を気軽に発信できますから、自分と違う立場への嫌悪感が増幅されていく。今はそういう悪循環があると感じます。ですから、顔を合わせて、しっかり対話する場が必要だと思います。

日本報道検証機構は、安保法制をめぐる記事で大手新聞が、どういう人物のどういう発言を取り上げたのかを分析してきましたので、シンポジウムの前に記者発表する予定です。データによって、メディアの取材対象やコメントの採用にどのような偏りがあるのかを浮き彫りにします。

――どうして、偏ってしまうのでしょうか?

メディアはどうしても、賛成・反対という分かりやすい対立構造を取り上げがちです。二項対立の図式が分かりやすく、読者に求められていると思い込んでいるのでしょう。

たとえば、世論調査。よく、9条改正に賛成か反対かの二択で聞いていますが、意味がないと思っています。同じ反対の立場の人でも、自衛隊や自衛戦争への考え方は違うかもしれない。同じ賛成でも、どこまで武力行使を認めるかに考えの違いがあるかもしれない。でも、今まではそういう大事な論点に目をつぶって、「改憲か護憲か」という二項対立に基づく報道を延々とやってきたわけです。

加えて、メディアは問題をどのように解決するかという視点が欠けています。憲法9条に限らず、普天間基地の移設問題なんて、延々と同じ視点、構図で報道を続けています。異なる立場どうしできちんと議論して、結論を出す必要があるのに、今のメディアの報道は、自分たちの主張にいかに有利になるかを優先しているように映ります。対立が残った方が飯のタネになるのかもしれませんが・・・。

●「対談」と「両論併記」は似て非なるもの

――どのような報道が望ましいのでしょうか?

異なる立場同士の「対談」が有効だと考えます。そうすれば、違いや論点が浮き彫りになる。一方、似て非なるのが「両論併記」です。別々にインタビューして並べただけの記事をよく見かけますが、それこそ見せかけの中立性、不偏不党のアリバイづくりです。主張を垂れ流すだけではなく、リアルタイムに議論することによってはじめて、本当の違いがどこにあるのか、どこに共通点があるのかが見えてくるものです。

そもそも国の根本規範である憲法をめぐって、これほどの政治的対立が起きているのは不幸なことではないでしょうか。9条の解釈のどれが正しいのかというよりも、対立を残しておくことが本当にいいのかどうかを考えないといけません。左右の対立を乗り越えて次のステージにいけるかどうか、今、日本の民主主義が試されていると思います。メディアの人たちは、対立をもてあそぶのではなく、この社会をよりよくするためにどこに落としどころがあるのか、もっと真剣に考えてほしい。

――今度のシンポの特色はどのような点にありますか?

シンポには、9条について立場の異なる4人(松竹伸幸・「自衛隊を活かす会」事務局長、元日本共産党安保外交部長、伊勢崎賢治・東京外国語大学大学院教授、井上達夫・東京大学大学院教授、長谷川三千子・埼玉大学名誉教授、NHK経営委員)をお呼びしています。9条を変えるべきでないという立場は松竹氏だけですが、「新9条論」の伊勢崎氏も安全保障のスタンスは従来の護憲の立場に近いといえます。当日は3人から具体的な改定案を発表してもらいますが、全く異なる条文案を出しておられます。「護憲vs改憲」という二項対立的な図式が意味ないことがわかるはずです。


これまで、全く異なる立場をセットにした集まりはほとんどありませんでした。あっても、それぞれが自分の意見を一方的に聴衆に向かって主張するだけで、双方向の議論にはなっていませんでした。今回はそうではなく、クロストーク、具体的な解決策の提案を踏まえた対話と熟議をしていただきます。どんな展開になるのか全く予想もつきませんし、議論が収束することもないでしょうが、社会を二分する問題について対話と熟議を試みることの意義を、メディアの人にも国民の皆さんに知ってもらう機会になればと思います。

(弁護士ドットコムニュース)

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