「納品した作品を生成AIに学習されたくない」
「紙代が高騰したので、印税率を10%から7%に下げたいと言われた」
「海賊版サイトを見つけたらどうしたらいい?」
漫画家たちは今、どんな悩みを抱えているのか。
日本漫画家協会は6月5日、会員向け相談フォームに寄せられた質問と回答のうち、新たに追加したを公開した。
生成AIによる学習への不安、出版社との印税交渉、海賊版対策──。公開された相談からは、漫画家などフリーランスのクリエイターが直面するリアルな悩みと、その対処法が浮かび上がる。
●生成AIの学習に使って欲しくない場合は契約書に明記を
相談事例の中でも目を引くのが、急激に利用が広がっている生成AIをめぐる悩みだ。
相談者は「自分の著作物を納品後に生成AIに学習されたくない場合や、生成AIを使って画像の改変をされたくない場合、契約書に加えるべき文言を知りたいです」と質問した。
これに対し、協会は、著作権法に基づき、情報解析を目的とする生成AIの学習については、原則として権利者の許諾なくおこなえると解釈される可能性があると説明。
そのため、「本件目的以外に使用しない」といった一般的な契約条項だけでは、納品した作品がAI学習に利用されることを防げないおそれがあると指摘している。
一方で、生成AIによる無断改については、翻案権や同一性保持権の侵害にあたる可能性があるとしている。
そのうえで、AI学習やAIによる改変を確実に制限したい場合には、「事前の書面承諾なくAI学習のためのデータとして利用してはならない」「AIを用いて改変してはならない」などの条項を契約書に明記するようすすめている。
●紙代高騰を理由に印税率が「10%→7%」に?
出版社との契約条件をめぐる相談も寄せられている。
ある相談者は、出版社から紙代の高騰を理由に、それまで10%だった印税率を次回から7%に変更したいと提示されたという。
協会は、契約時点で印税率が10%未満の例はあるものの、協会が把握している範囲では、契約途中で印税率を引き下げた事例は確認できなかったと説明。「少なくとも一般的なケースではない」との見解を示した。
また、原材料費の高騰への対応は、印税率の引き下げではなく、単行本価格の見直しで対応すべきではないかとの考えも示している。
●海賊版サイトを見つけたらどう対処する?
作品の無断掲載をめぐる相談もあった。
「海賊版や、違法サイトを見つけた場合どうしたらいいでしょうか」という質問に対して、協会は、発見次第、該当作品の出版社に報告することを推奨している。
現在、多くの電子書籍事業者は一般社団法人ABJに加盟しており、出版社に情報が入ることで、ABJ側にも共有され、対応が進められるケースが一般的だという。
ABJは、正規版電子書籍の普及や海賊版対策に取り組む団体で、出版社や電子書店と連携しながら対応の取りまとめ役を担っている。
ただし、報告後すぐにサイトが閉鎖されるとは限らず、対応には時間がかかる場合があるとしている。
●コミカライズを降板したら原稿料を返さなければならない?
近年増えているコミカライズ作品をめぐる相談も寄せられている。
相談者は「コミカライズの連載を引き受けたものの、編集部の方針と折り合わず、担当編集者との協議の結果、作画の仕事を降りることになりました」と説明。出版社側から、すでに支払われた数話分の原稿料の返金を求められているという。
「連載準備で描き溜めただけで、未発表です。これは返金に応じるべきものなのでしょうか」という問いに対し、協会は、原稿料を返金すべきかどうかは契約内容によると回答した。
そのうえで、コミカライズ作品では、連載後に描き溜めた原稿を別の形で発表できないことも多いため、原稿料が作画作業の対価でもあると主張して出版社と協議する余地があるとしている。
また、出版社の依頼内容や連載を降りた経緯によっては、返金要求がフリーランス保護法に抵触する可能性もあると指摘している。
日本漫画家協会は今回の事例集について、「会員からよく寄せられる相談への回答をまとめたもの」と説明。契約や権利関係、報酬などをめぐるトラブルを未然に防ぐための参考情報として活用を呼びかけている。