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インスタDMに「卑わいな画像」、送り主は元同僚で「かなり不快」 訴えることはできる?
jessie / PIXTA

インスタDMに「卑わいな画像」、送り主は元同僚で「かなり不快」 訴えることはできる?

SNSでいきなり卑猥な写真が送られてくる被害は少なくないようです。Twitterでも「DMでいきなり下半身の写真送ってくる人いる」などの報告が複数ありました。

弁護士ドットコムには「FacebookのメッセンジャーやインスタのDMに、卑猥なメッセージや局部の写真が送られてくる」という相談が寄せられています。

相談者は以前、勤務先で一緒だった人から度々卑猥なメッセージや画像が送られてきており、「かなり不快なので訴えたい」と考えています。これだけでは法的に訴えることは難しいのでしょうか。星野学弁護士に聞きました。

●1対1のDMだと成立しない罪も

——刑事事件にできるのでしょうか

何罪が成立するかを考えてみましょう。

卑猥な画像を送信したのであるから「わいせつ物頒布罪」が成立しそうです。しかし、わいせつ物頒布罪の頒布は「不特定又は多数の者」が見ることを前提としています。

DMは原則としてやり取りをしている者同士しか見ることができないので「不特定又は多数の者」が見ることができる状態ではないとして、成立しないでしょう。

もちろん、DMでも複数人が参加するグループへ投稿した場合は話が別です。

また、同じ理由から公然わいせつ罪も「公然」とは言えないので、成立しないでしょう。

●迷惑防止条例違反に当たる可能性

——では、卑猥な画像を送信されて不快感を抱いても、泣き寝入りするしかない?

1回くらいであれば泣き寝入りもやむを得ないかも知れませんが、何度も続くようであればもはや「不快感」ではなく「恐怖感」となり見過ごせませんし、泣き寝入りが相手方をさらに増長させてしまう危険もあります。

そこで、迷惑防止条例違反に当たる可能性を検討します。条例は各都道府県が制定するため迷惑防止条例も都道府県ごとに内容が異なりますが、たとえば、連続してメールを送信する行為や性的羞恥心を生じさせる画像を送信する行為を処罰の対象としている場合が多いはずです。

したがって、迷惑防止条例に違反していると判断される場合には、迷惑防止条例違反として警察に被害届を出すことになります。

●警察に被害届を出すときのポイント

——DMの送信者がわからない場合でも被害届は出せますか

DMの送信者が判明している場合にはその人物を加害者として被害届を出しますし、送信者が不明であっても加害者が不明として被害届を出すことが可能です。

ただ、警察に被害届を出すといっても、少し問題が残ります。

それは、痴漢など実際に性的被害を受けた場合や盗撮された場合と比較して、卑猥な画像の送信を受けただけという場合は被害が小さいと評価される可能性があるため、警察できちんと被害届を受理してくれるかという点です。

DMを送信した人物がわかっている場合には加害者の特定が容易ですが、送信した人物が不明の場合には、警察にとっても加害者の特定は困難あるいは特定までの作業が極めて煩雑になります。

また、たとえ加害者がわかって処罰を受けたとしても刑務所に入るような結果にはならないでしょう。そうすると、警察が本腰を入れて動いてくれないという危険性も否定できません。

——警察にきちんと捜査をしてもらうために、どうすればいいのでしょうか

メールの受信記録を証拠として保管した上で、被害届の提出段階から弁護士を代理人として選任して被害届を提出するという方法があります。

なお、画像の送信数が多く、かつ、卑猥な程度が著しく、これにより精神的なショックを受けて身体に変調を来した場合には、医療機関で診察を受けることも検討すべきでしょう。医療機関が何らかの疾患を発症したという診断書を発行した場合は、その診断書とともに警察に被害届を提出すれば、状況によっては傷害罪の成立も視野に入れた対応が期待できます。

ただ、加害者が実際に警察の捜査対象となったとしても、すぐに刑務所に入るような結果にはならないでしょう。

そこで、今後の被害を防止するためには、刑事責任の追及だけでなく、民事責任の追及として損害賠償請求を行い、示談あるいは裁判上の和解などで二度と卑猥な画像を送信しないことを誓約させ、その誓約に違反したときには高額の違約金を支払う内容の合意を取り付けるという方法を検討されてはいかがでしょうか。

プロフィール

星野 学
星野 学(ほしの まなぶ)弁護士 つくば総合法律事務所
茨城県弁護士会所属。交通事故と刑事弁護を専門的に取り扱う。弁護士登録直後から1年間に50件以上の刑事弁護活動を行い、事務所全体で今まで取り扱った刑事事件はすでに1000件を超えている。行政機関の各種委員も歴任。

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