ヤフーニュースのコメント欄に事実無根の内容を投稿して、大阪府高槻市の市議を中傷したとして、府内に住む男性が略式起訴されて、茨木簡裁で罰金10万円の略式命令が下された。
産経新聞などによると、男性は2018年10月、大阪府高槻市の市議がおこなった住民監査請求に関する記事のコメント欄で、虚偽の文章を投稿して、市議の名誉を傷つけたとされる。
この投稿を受けて、市議は2019年、発信者の開示をもとめる訴訟を起こして、投稿者を特定。そのあと、男性を相手取り損害賠償をもとめて大阪地裁に提訴し、2020年に和解が成立していたという。
一方、市議は大阪府警に刑事告訴もしており、男性は今年4月、名誉毀損の疑いで書類送検されていた。
●刑事罰までは「めずらしいかもしれない」
ヤフーニュースのコメント欄、いわゆる「ヤフコメ」に関する名誉毀損はめずらしいのだろうか。インターネットの権利侵害問題にくわしい中澤佑一弁護士が解説する。
「ヤフーやヤフコメに対する情報開示(民事)はめずらしくはありませんが、刑事罰までいったというのは、件数として多くなく、めずらしいかもしれません。犯罪が成立するケースでも、本人が反省しているなどの理由で不起訴になることも多いです」(中澤弁護士)
中澤弁護士によると、ヤフコメ上の名誉毀損で、投稿者に損害賠償をもとめたり、刑事責任を追及するのであれば、通常、ヤフーに対して発信者情報開示仮処分を申し立て、通信記録を取得したうえで、さらに通信会社に対して、発信者情報開示の訴訟を起こして、相手を特定する必要がある。
「いずれも原則として、裁判所の命令がないと開示されません。期間は全体で6カ月強かかります」(中澤弁護士)
つまり、投稿者を特定するまでに時間がかかり、さらに特定すらできないケースがあるということだ。なお、今回のケースは、発信者情報開示の手続きの観点から意外性もあるという。
「報道ベースによると、『アイツの遊説場所に出くわしたら、幸運を呼ぶ痰壺(たんつぼ)みたいなのを買わされそうになって、なんであんなのが市議してるんだろうと気持ち悪かった』というコメントが、民事の発信者情報開示手続きで権利侵害が認められたようです。
この点は、ちょっと驚きです。一般的に、発信者情報開示手続きでは、権利侵害が明らかであることを被害者側が立証しなければならないハードルがあり、通常は書かれた内容が虚偽であることを立証します。
今回のような投稿については、投稿者がわからない状態で『そんなことはなかった』と立証するのはむずかしいと思われます。どのような主張立証で情報開示が認められたのかはわかりませんが、非常に巧みな主張立証の結果だと思います」(中澤弁護士)
ヤフコメをめぐっては、誹謗中傷にあたるような投稿を問題視する声もあり、ヤフー側もその対策を強化しているといわれている。
「ほかのサイトと比較して、ヤフコメに特に何か問題がということはないでしょう。利用ユーザーが多ければ、それだけ問題のある投稿も増えてしまうのは、仕方がないことだと思います」(中澤弁護士)