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2020年10月16日 10時02分

インスタの「ストーリーズ」掲示板転載は「肖像権侵害」 地裁が発信者情報開示を命じる

出口絢 出口絢
インスタの「ストーリーズ」掲示板転載は「肖像権侵害」 地裁が発信者情報開示を命じる
インスタグラムのストーリーズはアプリ上部に表示される

インスタグラムのストーリーズ機能を使ったことはあるだろうか。投稿が24時間で消えるというもので、フィードの投稿とは別に、リアルタイムで写真や動画をシェアすることができる。その気軽さから、ストーリーズの更新の方が多い人もいる。

そんなストーリーズ機能をめぐり、9月に東京地裁で注目すべき判決が出た。顔の写ったストーリーズのスクリーンショットがネット掲示板に転載されたことについて、肖像権侵害が認められたのだ。インスタの投稿者はプロバイダに対し、転載した人の開示請求をしていた。

裁判所は、24時間限定で公開するストーリーズの特性を踏まえ、「継続して公開されることは想定されていなかった」と述べている。今回の判決は、どのような意義があるのだろうか。インターネットの法律にくわしい最所義一弁護士に聞いた。

●問題となった投稿は?

——どのような投稿が問題となっていたのでしょうか

今回訴えを起こしたのは、ご夫婦です。2人は食事に行った際の様子をインスタグラムのストーリーズにアップしました。その動画は、男性が撮影し女性が写っていましたが、その一部をスクリーンショットで保存した何者かが後日、匿名掲示板にその画像を添付して投稿しました。

投稿の際に、投稿者は、女性を揶揄するような文言を添えて投稿していました。

夫婦は、掲示板への投稿により、動画を撮影した男性の著作権、動画に映っていた女性の肖像権が侵害されたと主張。また、投稿が社会的評価を低下させるようなものだとして、投稿をした人物が契約しているプロバイダに対して、発信者情報の開示を求めました。

●裁判所の判断は?

——裁判所はどのような判断をしたのでしょうか

まず、著作権について、ストーリーズの動画は著作物に該当し、男性が著作権を有するものであり、投稿によって著作権(複製権および公衆送信権)侵害されたことが明らかだと判断しました。

また、肖像権について、「動画は24時間に限定して保存する態様によって投稿されたもので、その後も継続して公開されることは想定されていなかった」とインスタグラムのストーリーズの特性に触れた上で、女性は私人であり、画像は私生活の一部を撮影した動画の一部で、画像利用に「正当な目的や必要性も認めがたい」と判断し、肖像権侵害されたことが明らかだとしました。

以上の2点から、プロバイダに対して発信者情報の開示を認めました。

●ストーリーズの特性が考慮された

——ストーリーズの転載で肖像権侵害が認められる判決は初めてですか

自らの写真をインターネット上に公開していたケースで、第三者が無断で写真を公開した場合に、肖像権侵害が認められた事例はあります。

ですが、24時間に限定するストーリーズの特性を根拠に、「継続して公開されることは想定されていなかった」と、当初の公開の趣旨を限定した事例は、私が知る限りありません。

——この判決の画期的なポイントを教えてください

自らの写真をインターネット上に投稿した場合、インターネット上で公開されることを自ら容認していた(その限度で肖像権を放棄していた)などとして、権利侵害を否定する主張がなされることがあります。

今回の裁判でも、被告側は「インターネット上で公開することについて黙示の承諾を与えていた」と主張していました。

本来、自らがインターネット上に投稿した場合であっても、それは、一定の範囲において閲覧されることは容認するにしても、いかなる場所、いかなる態様においても、常に容認する趣旨で、投稿をおこなう人の方が、むしろ稀ではないでしょうか。

とはいえ、投稿時においてどこまで容認していたのかについては、投稿を行う人の主観に関わる事実です。それを事後的に認定するためには、客観的な外形事実から認定しなければなりません。

この認定をする際の一つの事情として、24時間限定で公開されるストーリーズの特性が用いられたのが、今回の判決です。

●ポイントは「どこまで公開を許諾したのか」

——この判決が与える今後の影響はどのようなものでしょうか

今回の判決も、24時間限定で公開されるというストーリーズの特性を認定根拠としていますが、本来、肖像権は、人格権に由来する権利ですので、単純に放棄したと判断されるべきではなく、どこまで公開を許諾(容認)したのかという、許諾(容認)の範囲として検討すべき問題です。

——ネットに写真をアップしたからといって、ネット上のあらゆる場所で公開されることは容認していない。アップした人がどこまでの範囲を想定していたか、個別に考えられるべきということですね

その意味では、インターネット上に投稿していることのみをもって、自らの肖像権を放棄(容認)したなどと認定することなく、投稿者の意図した公開の範囲をストーリーズの特性を根拠に認定した今回の判決は、インターネット利用者の通常の意思にも合致するものといえるのではないでしょうか。

ただ、今回は、許諾されていないから直ちに違法だと判断した訳ではなく、投稿の内容、態様、必要性等の事情を総合的に考慮した上で、受忍限度を超えるものとして違法性を認定しています。

その意味では、たとえ本人の許諾が認められない場合でも、受忍限度内であれば、適法と判断される場合がありますので、その点は注意が必要です。

●プライバシー権も認められるべき

——肖像権以外の権利については、どう考えられますか

また、肖像権と同様に、人格権の一内容としてのプライバシー権侵害についても、同様に考えることができるはずです。しかしながら、なぜか、プライバシー権侵害の場合には、裁判所は、「自ら公開したのだから、プライバシー権を『放棄』したのではないか」と指摘してくることがあります。

本来、プライバシー権においても、「法益の保護主体が『同意』した範囲を超えて公開されれば、当然に違法となりうる」(「プロバイダ責任制限法判例集」(LABO)p.165〜166)はずですが、なかなか、裁判所は、プライバシー権に関しては、正面から認めてくれません。

この点については、訴訟の様々な場面において、主張していかなければならないと思っています。

取材協力弁護士

最所 義一弁護士
東京大学農学部農業工学科(現生物・環境工学専修)を卒業後、IT技術者や病院事務職(事務長)を経て、弁護士に。一般企業法務や知的財産問題のほか、インターネット関連のトラブルの解決に精力的に取り組んでいる。

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