木下優樹菜さんが9月27日、インスタグラムのストーリーズを更新。「いまだに死ねだとか たまぁに言ってくる可哀想な人いるけどさ、全部情報開示 以上。」と誹謗中傷に対し法的措置をとる意向を示した。
木下さんはファンから「死にたい」というメッセージが寄せられることもあるといい、「見て 優樹菜を」と泣き笑いの絵文字をつけ、呼びかけていた。
果たして、「情報開示」とはどのようなステップを踏むのだろうか。田中伸顕弁護士に聞いた。
●2段階の段取りを踏む
——そもそも、木下さんが投稿した「情報開示」とはどのようなものでしょうか
法的には「発信者情報開示請求」と言われるもので、インターネット上の匿名掲示板やSNSにおいて、誹謗中傷する投稿をした人物を特定するための手続です。
損害賠償請求などの法的な措置をとるためには、投稿をした人物の氏名と住所が必要になります。
そのため、発信者開示請求をすることで、匿名掲示板やSNSに投稿をした人物の氏名と住所を手に入れることになります。
——どのような段取りを踏みますか
インスタグラムといった、SNS事業者は残念ながら、投稿をした人物の名前や住所などの情報は持っていません。
代わりに、その投稿を行った電子機器のいわばインターネット上の住所であるIPアドレスという情報を持っているため、まずはこのIPアドレスをSNS事業者から開示してもらいます。
IPアドレスが分かれば、投稿をした人物がどこの電話会社と契約しているのかが分かります。
そこで、次の段階では、開示してもらったIPアドレスを基に、電話会社に書き込んだ人物の住所と名前の開示を求めていくことになります。
このように、2段階の段取りを踏むことになります。 発信者情報開示請求の流れ(田中弁護士作成)
●開示まで1年以上かかる
——だいたいどれくらいの時間がかかりますか
まず、SNS事業者に対して、仮処分の申立を行う必要があります。
SNS事業者に対する仮処分は、申立をした日から結果が出るまで、スムーズに進んで、大体1カ月を超えるくらいの期間で開示が認められる模様です。
次に、電話会社に対して発信者情報開示請求の裁判を起こすのですが、裁判を起こしてから判決が出て発信者情報が開示されるまで、6カ月から1年程度かかります。
したがって、SNS事業者に仮処分の申立をして、最終的に投稿した人物の住所や氏名が開示されるまで、1年以上かかるといえます。
——どのような投稿が権利侵害とされますか
例えば、名誉毀損であれば、性風俗店において本番行為、つまり法令上禁止されている行為を行っている事実を示すなど、社会的評価を下げるような事実を示す投稿が考えられます。
プライバシー侵害であれば、実名や住所、車のナンバープレート、携帯電話番号などを公開する投稿が考えられます。
また、「バカ」「アホ」などの他人の名誉感情を害する表現の場合、侮辱行為だとして権利侵害が認められることがあります。
●同じ人が複数回投稿しているケースも
——木下さんは「全部情報開示」と話していますが、それは可能ですか
可能ではあるものの、大変だと思われます。発信者情報開示請求では、1つ1つの投稿ごとに、誰の権利について、なぜ侵害したといえるのか、を説明しなければなりません。
開示を求める投稿の数が多ければ多い程、労力と時間がかかります。そのようなこともあって、私が依頼を受けるときは、あらかじめ開示を求める投稿を絞ってもらうことがあります。
誹謗中傷の投稿は、数が多いように見えてもフタを開けてみると数人の人しか投稿していなかった、といったケースが比較的よくあります。そのため、全ての投稿について開示を求める必要がないこともあるのです。
いずれにせよ、被害に遭われたときは、早期に弁護士に相談して、発信者情報開示請求をするために動き出すかどうかなどをできるだけ早く決断すべきでしょう。