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 五輪延期で選手村跡マンションも引き渡し遅延? 不動産プロ「通常は契約者に救済措置なし」
東京都中央区で開発されている晴海フラッグ(i-flower / PIXTA)

五輪延期で選手村跡マンションも引き渡し遅延? 不動産プロ「通常は契約者に救済措置なし」

新型コロナウイルスの感染拡大による東京五輪の延期が3月24日、決定した。特に影響が大きいと予想されるのが、五輪・パラリンピックの選手村跡地に開発される「HARUMI FLAG」(晴海フラッグ、東京都中央区)の分譲マンション群だ。

晴海フラッグは、約18ヘクタールの敷地に24棟のマンションや商業施設などを整備する計画。このうち分譲マンションは4145戸と超大規模物件となっている。昨年から第1期の販売がスタートし、すでに945戸が契約済みという。

売主の一社である三井不動産は弁護士ドットコムニュースの取材に対し、「昨夜の報道で五輪の延期を知ったばかりで、現在、東京都に確認しているところです。今の段階で何もお話できることがありません」と説明するが、ネットでは引き渡しの延期などを懸念する声が上がっている。

一体、どのような影響があるのだろうか。不動産コンサルティング会社「さくら事務所」会長、長嶋修氏に聞いた。

●コロナショックに五輪延期で販売が長期化すると?

そもそも、晴海フラッグの分譲マンションとは?

「まず晴海フラッグの特徴は、超巨大プロジェクトであるということです。これほど大規模のプロジェクトは、戦後の高度経済成長期に計画された公団住宅以外ありません。東京五輪の選手村の跡地ということで注目も集まっていました。

しかし、五輪の延期が決定する前から、新型コロナウイルス・ショックで、晴海フラッグだけでなく、新築マンションの市場が冷え込んでいます。モデルルームを訪れるお客さんは半減どころか、8、9割減になっています。

そうした中、五輪が延期となったことで引き渡しがさらに遅れた場合、販売の長期化は避けられず、価格も下落方向に働く可能性があります。

もともと、晴海フラッグは五輪・パラリンピック後に改装してからの引き渡しとなり、契約者が実際に住めるのは、2023〜2024年に予定されていました。今、契約しても最長で5年後です。

そこから仮に1年の延期となると、1年生の子どもがいたら6年生になります。そんなに先の契約が可能かというと、難しいでしょう」

●通常の不動産契約であれば、契約者に救済措置はなし

すでに契約してしまった人はどうなる?

「大体、こうしたファミリー向けのマンションは、子どもの進学や親との同居など家庭内のイベントに合わせて購入されます。ですから、予定以上に遅れるとなると、困る購入者の方はたくさん出るのではないでしょうか。

しかし、通常の不動産契約ですと、売主の都合で引き渡しが遅れる場合は違約金の対象となりますが、天災などで工事が遅れるなど、売主が予測しえない理由による引き渡しの遅延は、対象ではありません。

今回、五輪が遅れるのは売主の責任ではありませんので、契約者との契約は続行になると考えられます」

しかし、入居が延期される場合、契約破棄をしたいという人も出てきそうだが…。

「一般的に、購入者の方が契約を破棄する場合、手付金を放棄する必要があります。晴海フラッグのケースはわかりませんが、通常の不動産契約では、手付金は価格の5%から10%となっています」

晴海フラッグの公式ホームページによると、第1期の予定販売価格は、4900万円台~2億2900万円台で、予定最多販売価格帯は6400万円台となっている。安く見積もっても手付金は数百万円と思われる。東京五輪という公的なプロジェクトにも関わるが、契約者に救済措置はないだろうか?

「確かに土地は東京都からの購入ですが、開発する事業主は民間ですので、契約に忠実に従うのであれば、何かをする必要はありません。今後、なんらかの救済措置が考えられるかもしれませんが、現在では不透明です」

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