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「抱っこしていれば問題ない」夫がチャイルドシートをつけません→道交法違反の可能性も
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「抱っこしていれば問題ない」夫がチャイルドシートをつけません→道交法違反の可能性も

子どもの命を守るチャイルドシート。車に乗せるときには必須ですが、弁護士ドットコムには「夫がチャイルドシートをつけてくれない」という相談が複数寄せられています。

●【相談】夫「同乗者が抱っこしていれば問題ない」

ある女性は、ショッピングモール駐車場内でのチャイルドシート装着をめぐり夫と揉めました。

「夫と子供(0歳)と3人で買い物に出かけた際、ショッピングモールの駐車場内で車を移動させようとしたところ、夫が『駐車場は公道ではないしほんの少し移動させるだけだから、チャイルドシートに乗せなくてもいい。同乗者が抱っこしていれば問題ない』と言い出しました」

別の女性は、何かと理由付けしてチャイルドシートを付けたがらない夫に嫌悪感を抱いています。

「旦那が、面倒くさがって、チャイルドシートをつけません。2歳の子どもです。『すぐ着くから』とか『車ににおいがつくから』とか、自分の理由ばかりを優先させています。私も何度も言っているのですが、全く聞いてくれません。危ない目にもあった事もあるし、一緒に乗るのも嫌です」

子どもをチャイルドシートに乗せずに運転すると、どのような法的問題があるのでしょうか。

●【回答】チャイルドシートの使用は「法律上の義務」(清水卓弁護士)

チャイルドシートの使用については、自動車の運転者は、チャイルドシートを使用しない6歳未満の幼児を乗せて、自動車を運転してはならないと法律で定められています(道路交通法第71条の3第3項)。

ただし、以下の場合は、使用義務が免除されています(道路交通法施行令第26条の3の2の第3項)。

1座席の構造上、チャイルドシートを固定することができないとき。
2定員内の乗車で、乗車人員が多人数のため乗車する幼児全員にチャイルドシートを使用すると全員が乗車できなくなるとき。
3幼児が負傷している等、チャイルドシートを使用することが療養上又は健康保持上適当でないとき。
4著しい肥満や、その他幼児の身体の状態により適切にチャイルドシートを使用できないとき。
5チャイルドシートを使用したままでは、授乳等の日常生活上の世話ができないとき。
6バス・タクシーなど、一般旅客運送事業の用に供される自動車運転者が当該事業の旅客である幼児を乗車させるとき。
7道路運送法第80条第1項ただし書の規定による許可を受けて人の運送の用に供される自動車運転者が当該運送のため幼児を乗車させるとき。
8応急救護のため医療機関、官公署等へ緊急に搬送する必要がある幼児を乗車させるとき。

●「公道ではないから使用義務はない」は勘違い

次に、道路交通法では、「一般交通の用に供するその他の場所」も「道路」とされています(道路交通法第2条第1項第1号)。

そして、「一般交通の用に供するその他の場所」に該当するかどうかは、「不特定多数の者が自由に通行・利用できる状態か否か」で判断されます。

そのため、スーパーやショッピングモール等の駐車場内のように、不特定多数の買い物客が訪れる場所の場合、道路交通法の規定が適用される可能性があります。

チャイルドシートを使用しない状態で6歳未満の幼児を乗せて自動車を運転してしまうと道路交通法違反(第71条の3第3項)になってしまうこともありますので、注意が必要です。

●ペナルティは?

チャイルドシートの使用義務違反の違反点数は1点、反則金等はありません(道路交通法施行令別表第1)。

●手間や面倒とお子さんの安全のどちらをとりますか?

そもそも、なぜ、6歳未満の幼児にチャイルドシートの使用が道路交通法上義務づけられたのでしょうか。

それは、幼児は自分で自分の安全を確保することができないためです。自動車に乗車する幼児を交通事故の被害から守るために、2000年4月1日から6歳未満の幼児にチャイルドシートの使用が義務付けられました。

警察庁HPでは、「チャイルドシート不使用者の致死率は適正使用者の約5.3倍」と注意喚起しています。

また、神奈川県警HPでは、「大人が抱えていればチャイルドシートは必要ないのではありませんか?」という問いに対し、「チャイルドシートは必要です。事故の強い衝撃から、人の力では子どもを守ることはできません。時速40kmで衝突したとしたら、体重10kgの子どもの約30倍の300kgに相当します。腕力で支えられるものではありません。車外に投げ出されてしまう危険性もあります。ひざの上でのだっこは絶対にやめましょう」と回答がされています。

お子さんの安全を家族の皆さんで考える際の一助になれば幸いです。

プロフィール

清水 卓
清水 卓(しみず たく)弁護士 しみず法律事務所
東京の銀座にある法律事務所の代表を務め、『週刊ダイヤモンド(2014年10月11日号)』で「プロ推奨の辣腕弁護士 ベスト50」に選出されるなど近時注目の弁護士。交通事故分野などで活躍中。被害者救済をライフワークとする“被害者の味方”。

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