「無免許」であるとは知らずに、友人が運転する車に乗ってしまったーー。弁護士ドットコムにこのような相談が寄せられている。
相談者は、友人が運転する車に乗せてもらった。しかし、友人が車の免許を持っていないことを後から知り、罪に問われるのではないかと心配を募らせているそうだ。
●知らなくても「無免許運転同乗罪」は成立する?
運転する人が無免許であることを知りながら、自己を乗せて運転することを要求したり、依頼したりした場合は、無免許運転同乗罪が成立する(道路交通法64条3項)。違反した場合は2年以下の懲役または30万円以下の罰金となる(同法117条の3の2第1号)。
しかし、相談者の場合は、友人が無免許であることを知らなかったという。このような場合はどうなるのだろうか。西村裕一弁護士に聞いた。
●相談者は「罪に問われる可能性はない」
ーー相談者のように、友人が無免許であることを本当に知らずに、友人の車に同乗していた場合は罪に問われることはあるのでしょうか
質問のケースでは、友人が無免許運転であることを知らなかったということですので、道路交通法の「運転免許を受けていないことを知りながら」には当たりません。
したがって、本当に知らなかったのであれば、このケースで罪に問われることはありません。
ーーもしも仮に、免許を持っていないことを知っているものの、運転者の誘いを断れずに同乗してしまった場合はどうなりますか
運転者から同乗するように要求された場合も、形式的には「自己を運送することを要求し」たわけではないため、罪に問われないことになります。
もっとも、無免許運転の友人が「送ってあげるよ」と言ったことに対して、断りづらくて「じゃあお願い」と言ったような場合、きっかけは友人側であっても、自分も友人に送迎を依頼したと評価できるため、罪に問われる可能性があるでしょう。
このように、運転者から同乗するように要求されて断れなかったとして、明らかに罪に問われないといえるケースはそれほど多くないと考えられます。
●「知らなかった」ことは証明できる?
ーー相談者は、友人が無免許であることを「知らなかった」ことをどのように証明すればよいのかと悩んでいるようです
無免許運転であることを知らなかった場合には、「知らない」という、「ないこと」を証明しなければいけませんので、簡単なことではありません。
友人との日頃の関係性(どのくらいの期間知り合いなのか、どの程度の頻度で会っているか)や運転に使用した車を誰が用意したのか、友人が免許をもっているといった趣旨のLINEのやり取り(「免許とったから今度ドライブ行こう」等)などから説明することになろうかと考えられます。
いずれにしても、交通事故やスピード違反などをきっかけとして、無免許運転が警察に発覚した段階でその車に乗っていた場合、無免許運転同乗罪に該当するかどうか、警察の捜査を受ける可能性が高いでしょう。
無免許運転は非常に危険な行為で事故を起こしてしまえば、命を失う可能性もあります。友人だからといって安易に身を委ねないことです。