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駅のエスカレーター「片側歩行」でケガの恐れーーもっと強く「禁止」を打ち出すべき?
駅の張り紙

駅のエスカレーター「片側歩行」でケガの恐れーーもっと強く「禁止」を打ち出すべき?

「エスカレーターで歩いたり、走ったりしないでください」。このような注意喚起の掲示を駅構内などで見かけることがある。だが、エスカレーターに乗ったときに歩いている人も多いのではないだろうか。片側に「止まっている人」が並び、その横を「急ぐ人」が追い抜いていく形が東京や大阪などの都市部では定着しているが、なかには体や荷物が当たって、転倒するようなトラブルも生じている。

朝日新聞が報じた東京消防庁の統計によると、エスカレーター事故で救急搬送されるケガ人が増えているという。2012年は前年より93人増の1289人で、2013年は1380人、2014年は1443人だった。そうなると、エスカレーターの歩行禁止もやむえないように思えるが、弁護士ドットコムニュースが国土交通省に確認したところ、エスカレーター使用時の規制を明確に定めた法令は存在せず、あくまでもメーカーや設置施設、そして利用者本人の問題になるそうだ。

積極的に注意喚起を行っているJR東日本は「首都圏における右側歩行など、エスカレーター使用時のルールはお客様同士の合意や慣習から形成されたものです。鉄道会社として強制的に歩行を禁止するのではなく、その危険性を地道に訴えていきたい」と話している。

今のところ、明確な法的規制はなく、利用者のマナー意識に訴えている状態だが、鉄道会社に、何らかの義務は存在しないのだろうか。また、この問題はどのようにして解決すべきなのだろうか。鉄道問題に詳しい岡田一毅弁護士に聞いた。

●「鉄道会社には安全配慮義務がある」

「エスカレーター上を走ったり、歩いたりすることは利用法としては誤っていますので、そのために事故が発生した場合は、走ったり歩いたりした利用者の責任となります。原則として、鉄道会社は責任を負わないと考えて良いと思います。

ただ、歩いたり走ったりしてはいけないという注意喚起をしていない状態であれば、鉄道会社がエスカレーター設備の利用について、十分に説明をしていないということになります。

鉄道会社は利用者と運送契約を締結しており、その際、安全に配慮する付随義務が認められます。ですから、設備の利用についての説明不足として、安全配慮義務違反として損害賠償をしなければいけない可能性があります」

どこまでが、鉄道会社の責任になるのだろうか。

「一般的にエスカレーターの歩行は禁止されているところから、利用者も応分の過失が認められ、損害の全額を鉄道会社が負担することはないと考えられます。

ですから、利用者としては、エスカレーターを歩かないで利用すべきですし、鉄道会社としても十分アナウンスすべきです。できれば注意喚起ではなく、禁止ということを掲示すべきではないでしょうか」

岡田弁護士はこのように話していた。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

岡田 一毅
岡田 一毅(おかだ かずき)弁護士 奥村・岡田総合法律事務所
2013年度京都弁護士会副会長。交通事故などの交通法務に詳しく、大手損保会社の顧問弁護士も勤める。また医療法人の顧問弁護士など、医事法務についても手がけている。大の鉄道好きでもある。

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