大阪府八尾市の中学校で、生徒157人が参加する巨大ピラミッドが崩壊した事故がきっかけとなり、「組体操」の安全性への危惧が広がっている。八尾市の教育委員会が調査したところ、過去10年間で139人が組体操で骨折していたことがわかった、という報道もあった。
教育評論家の尾木直樹氏がブログで「組体操は緊急中止すべき! 強行学校は処分すべきです!」と批判したほか、ネットには「教師の自己満足じゃないんですか?」などと、巨大「ピラミッド」を目指す組体操のあり方を疑問視する声があいついでいる。
「組体操はやめるべき」との意見について、弁護士はどうみるのだろうか? 学校やスポーツの法律問題に詳しい宮島繁成弁護士に聞いた。
●なぜ「組体操」が行われているのか?
宮島弁護士は「要は程度問題」だと指摘する。
「なぜ組体操が行われているかといえば、チームワークや達成感などを学ぶ目的があるからでしょう。組体操に限らず、スポーツはもともと危険なものですし、日常生活でも危険なことはたくさんあります。組体操だけを『危険だからやめろ』ということは言えません。
要は、程度問題と言えます。
ピラミッドの難易度や、子どもの体力や技能と照らし合わせ、明らかに危険なことをさせてはいけないのは当然のことです。これも、本来は、教育委員会が指導する前に、学校自ら安全性の検証を行っておくべきと思います」
ただ、今回の事故は、ソーシャルメディアやニュースで広く知られることになり、「今すぐ、教育委員会なり学校の判断によって、やめさせるべきではないか」という声が沸き起こっているようだ。その点をどう考えたらいいのか。
「組体操がおこなわれる運動会は『特別活動』として、その練習は一般的に、中学校では『保健体育』、小学校では『体育』の授業として、行われています。
つまり、設定した教育目標に基づき、教育活動の一貫として実施されています。このため、学校として、保護者や第三者の意見を参考にすることはありますが、『組体操をやめろ』というのは、算数の教え方に注文をつけるのと同じ側面がないわけではありません」
このように宮島弁護士は指摘する。
●負傷した場合、賠償を求められる?
では、もし組体操で子どもが負傷した場合、保護者は、学校や教員に対してどんな請求ができるのだろうか?
「学校の管理下で起こった事故として、スポーツ振興センターが運営する災害共済給付の支給対象となります。治療費のほか、後遺障害が残った場合は、定額の障害見舞金が支給されます。
それでまかなわれない損害、たとえば慰謝料や後遺障害に基づく損害で障害見舞金を超える部分などは、公立学校の場合は、国家賠償法の要件を満たせば市町村などに賠償請求できます。
過去にも、組体操の事故について、福岡、東京、名古屋で裁判になったケースがあり、いずれも学校側の過失を認めて賠償を命じています」