「東京では、白人ならどんな日本人女性ともヤレる」。こう豪語する外国人男性が11月中旬に来日するという情報が広まり、「日本人女性の尊厳を貶める」「ハラスメントだ」と入国を阻止しようとする運動がネットで起きている。
問題の男性は、米国人とされるジュリアン・ブランク氏。海外メディアの報道によると、ブランク氏は世界各地で「女性のナンパ方法」を男性に指南するセミナーを主宰しており、「ナンパの伝道師」と称されている。You Tubeでは、ブランク氏らしき男性が「女性の頭をつかんで股間に押し付ければいい」と力説している動画も公開されている。実際に街で声をかけた女性の顔をつかんで、股間に近づける場面もあった。
署名サイト「change.org」では11月6日、「ブランク氏の入国を断固阻止する」という署名活動が立ち上がり、15日現在、賛同者が5万人を超えている。集まった署名は11月10日、東京入国管理局に提出されたという。このような署名によって、ブランク氏の入国を拒否できるのだろうか。入管法にくわしい山脇康嗣弁護士に聞いた。
●就労目的の入国か、短期滞在かで条件が変わる
「入国管理局は、多くの署名が集まっていること自体を理由として、外国人の入国を拒否できません」
なぜ、拒否できないのだろうか。
「入国管理局は、入管法に定められた『上陸のための条件』を満たす限り、その外国人の入国を必ず許可しなければならないからです。この『条件』を満たしているにもかかわらず、入国を認めないという権限は、入国管理局にありません」
では、ブランク氏は条件を満たしているのだろうか。
「日本で就労できない『短期滞在』の在留資格で入国を計画しているのか、それとも就労可能な在留資格で入国を計画しているのかによって、条件が異なってきます。
ブランク氏は世界各国に短期間滞在して、『女性のナンパ方法』のセミナーを行っているということですが、このような活動をおこなうこと自体を理由として取得できる、就労可能な在留資格は日本にありません。
したがって、おそらく『短期滞在』の在留資格で入国を計画していると考えられます」
●セミナーに営利性・反復継続性があれば、入国できない可能性も
その場合の入国条件はどうなっているのか。
「次の4つが『条件』になります(入管法7条1項1号~4号)。
(1)パスポートが有効であること
(2)日本で行う活動として入国審査の際に述べる内容が虚偽でないこと、その活動内容が『短期滞在』の在留資格に該当すること
(3)在留期間が法務省令の規定に適合すること
(4)入管法が定める上陸拒否事由に該当しないこと」
山脇弁護士によると、この4つの条件のうち、特に(2)が問題になるという。
「要するに、ブランク氏が日本でセミナーを行おうとしていることを正直に申告し、かつ、それが就労活動とみなされないかどうかです。
就労活動とは、収入をともなう事業を運営する活動や、報酬を受ける活動を意味します」
就労活動にあたるかどうかは、どう判断されるのだろうか。
「セミナーの内容ではなく、『営利性・反復継続性の有無』がポイントとなります
たとえば仮に、ブランク氏が世界各国で、有料のセミナーを営利目的で繰り返し行っているとします。その場合、今回日本で実施するというセミナーが単発のものであったとしても、就労活動にあたるとして、『短期滞在』の在留資格に該当しないと判断される可能性があります。
『短期滞在』の在留資格であっても、『業として行うものではない講演』であれば、例外的に報酬を受け取ることが許されています。しかし、これも非常に限定的な運用がされています」
結局、ブランク氏の入国はどうなることが考えられるのか。
「多くの署名が提出され、報道もされていることから、ブランク氏は入国管理局の『要慎重審査リスト』に載っていると思います。もし、ブランク氏が空港での上陸審査の際に、『セミナーは就労活動にあたらない』という適切な立証ができなければ、入国が認められない可能性もあるでしょう」
山脇弁護士はこのように説明する。はたしてブランク氏は来日できるのだろうか。