「この2年間、時間が止まったままでした」
大阪地検トップの検事正だった北川健太郎氏(67)が、部下だった女性検事に性的暴行を加えたとして準強制性交罪に問われた事件で、約2年ぶりに公判が再開された10月27日、被害を訴えた元検事の女性が記者会見を開いた。
北川氏はこの日の公判で「女性が性交に同意していた」などと無罪を主張したが、女性は会見で「証拠に基づかないストーリーだ」と強く批判した。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)
●2年前と同じ服装で裁判所へ「多くの人に支えてもらった」
女性はこの日、2年前の初公判と同じ服装で大阪地裁を訪れたという。会見で、次のように振り返った。
「この2年間、時間が止まったままでした。自分が大好きだった職場で孤立する中、声を上げてから多くの方に『一人じゃないよ』と寄り添って支えてもらいました」
この日の公判で、北川氏側は女性が性交に同意していたなどと主張した。
これに対し、女性は「性犯罪被害者の苦しみを誰よりも知り、戦ってきた方が、同意や同意誤信を主張しているのを見て、悔しい思いでいっぱいになった」と語った。
大阪地検トップによる性犯罪事件の経緯(弁護士ドットコムニュース作成)
また、弁護人は、女性と北川氏の関係性を示す証拠として、北川氏宛ての寄せ書きを示した。
女性によると、寄せ書きは10年以上前に同僚の検事と一緒に作成したもので、「送ったこと自体忘れていた」という。
「尊敬する検事が、こんな恥ずかしい主張をすること自体に残念な思いや怒り、悔しさ、絶望感など、さまざまな感情がわいた。厳しく検察とはこうあるべきだと叩き込んでくれた方にレイプされたんだなと、しみじみと悲しくなった」
●「私の声をダイレクトに伝えたい」法廷での証言を決意
今後の公判では、女性への証人尋問が予定されている。
女性には、別室からビデオリンク方式で参加する選択肢もあったが、北川氏が出廷する法廷で直接証言することを決めたという。
その理由について、「私が苦しみ続けている声をダイレクトに北川と裁判官に伝えたかった」と説明した。
女性の代理人をつとめる奥村克彦弁護士は「彼女が私の事務所に来てから2年半になる」としたうえで、事件後も女性が苦しみ続けてきたとうったえた。
「この間、被告人と戦うのみではなく、検察庁という大きな組織との戦いをせざるを得なかった。 私自身、犯罪被害者がこんなに傷ついていく姿を見て、何もできなかったという忸怩たる思いがある。 想像してほしい。この2年半がいかに辛い時期だったか。考えてあげてほしい。どれほど厳しい時間であったか。何度も私に『死にたい』と叫んできた彼女の心がどんなものだったか。これからが本当の闘いだと思う」
元検事の女性の代理人を務める奥村弁護士(2026年10月27日、大阪市北区で、弁護士ドットコムニュース撮影)
●真相の解明求め、15万人余りがオンライン署名
事件をめぐっては、「女性検事を支援する会」が2025年1月から、真相解明などを求めるオンライン署名を続けている。
2026年10月27日時点で、15万854人分の署名が集まり、この日の公判に先立って大阪地裁に提出されたという。