今から76年前、旧国鉄の三鷹駅で無人の電車が暴走し、6人が死亡した「三鷹事件」をめぐって、死刑が確定した後に病死した竹内景助さん(当時45歳)の再審(裁判のやり直し)を求めている弁護団が10月10日、東京・霞が関で記者会見を開いた。
これまでの第1〜3次の再審請求の中で、初めて証人尋問が実施されることが明らかになった。
●竹内さんが死刑、共犯者とみられた9人は全員無罪に
事件が起きたのは、1949年7月15日。無人の電車が暴走して脱線し、6人が死亡、十数人がケガをした。
警察は共産党の関与を疑い、竹内さんと共産党員9人の計10人を逮捕、起訴。竹内さんは捜査段階で、単独犯行の自白をしたものの、その後の裁判では一転して無実を主張するなど、供述を繰り返し変えたとされる。
東京地裁は1950年、電車転覆致死罪に問われた竹内さんに対して、無期懲役を言い渡したが、翌年の東京高裁は死刑判決を下し、その後、確定した。一方、共犯者とみられた9人は全員が無罪となっている。
竹内さんは1955年に第1次再審請求を申し立てたが、審理が続く中で1966年に死刑囚のまま病死。最初の再審請求は終了した。
●特別抗告審が判断しなかった証拠を新たに提出
2011年には竹内さんの長男が第2次再審請求をおこなったが、東京高裁が棄却。弁護団は異議申し立てや特別抗告をおこなったが、最高裁は2024年4月、具体的な判断を示さないまま特別抗告を棄却した。
その後、同年9月に第3次再審請求がおこなわれ、現在、東京高裁で審理が進められている。
この日、東京・霞が関の司法記者クラブで記者会見を開いた主任弁護人の野嶋真人弁護士は、第2次再審請求の特別抗告審で判断が示されなかった証拠に加えて、鉄道に詳しい専門家の意見書などを「新証拠」として提出したことを明らかにした。
さらに、これまでの再審請求では一度も認められなかった証人尋問が、今年11月に実施されることが決まったと報告。「再審開始決定が出た他の事件では、決定が出る前に証人尋問が開かれることが多い。今回、僕としては大いに期待しています」と語った。
●争点の一つは「パンタグラフ」の状態
第3次再審請求では、暴走した電車のパンタグラフ(電車が電気を取り込むための装置)が、どの段階で上がった状態になったのかが主要な争点の一つになっているという。
野嶋弁護士は会見で、事件直後に現場を撮影した新聞社の写真を示しながら、パンタグラフの状態がこれまでの検察側の主張と矛盾しているなどと指摘した。
証人尋問は、11月18日と11月25日の2回、東京高裁で実施される予定だ。