米ウィスコンシン州で、母親にアイスクリームを食べられた男の子(4歳)が、警察に通報してしまうという出来事がありました。CNNが報じています。
CNNによりますと、男の子は、警察の通信係に向かって「家に来て、ママを捕まえて」と伝えたそうです。到着した警官には、母親が自分のアイスを食べたことを確認し、刑務所に入れてほしいと求めたといいます。
その後、男の子は「告発」を取り下げて、ただアイスを食べたいだけだと言いました。警官は2日後、男の子を訪れてアイスを手渡したそうです。ほっこりするニュースですね。
一方で、家族にアイスを食べられたという人は少なくないと思います。とくに子どものころは記憶に残っているんじゃないでしょうか。
ちょっと野暮ですが、もし日本で上記のような出来事があった場合、法的にはどうなるのでしょうか。西口竜司弁護士に聞きました。
●窃盗罪は成立するようで「しない」
さすが訴訟社会アメリカという感じのニュースですね。警察官も「グッドジョブ」です。
私も子どものころに父にアイスを食べられたことがあります。今回のようなケースについて、日本の法律で分析してみましょう。
まず、刑事的な責任ですが、お母さんは子どものアイスクリームを「勝手」に食べたようです。窃盗罪(刑法235条)の問題になります。
アイスクリームといえど「他人の財物」といえますし、お母さんの行為は子どもの意思に反して占有を移していうので「窃取」したといえそうです。その他の要件も満たすとすれば、窃盗罪が成立することになります。
ただし、窃盗罪については、親子のような場合、刑を免除するとされています(刑法244条1項)。ざっくりいえば、これは、警察が家族のいざこざに入らない、家族のことは家族で決めなさいというルールによります。したがって、窃盗罪は成立しても、刑は免除されます。
●損害賠償もむずかしい
民事的にいえば、不法行為(民法709条)による損害賠償請求の問題になりますが、一応、要件は満たしていると思います。ただし、未成年の子どもが裁判する場合、親権者が代わりに訴えを起こすことになります。
今回のような場合、お父さんが親権者だとすれば、お父さんがうんと言わないと、この話も進みません。結局、損害賠償請求もむずかしいと思います。
私の買ってきたアイスを父が食べていたケースでは、3倍くらいの量のアイスを買ってもらって機嫌を直しました。自分の子どもであれ、他人のものを勝手に食べるのはやめたほうがいいかもしれません笑。