公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンは2月12日、3歳以下の乳幼児がいる非課税世帯などを対象とした生活状況に関する調査結果を公表した。
調査では、回答世帯の約半数が経済的な理由で紙おむつが買えなかった経験があると回答。そのうち約75%がおむつを替える回数を減らしたとし、中には「少しだけうんちをした場合は替えずにそのまま履かせた」人も1割強いたという。
セーブ・ザ・チルドレンの田代光恵さんは、この日開かれた会見で「経済的に困難な状況で乳幼児を育てる世帯の厳しい現状が改めて浮き彫りになった」と話した。
そのうえで、国や自治体への提言として、紙おむつや必要に応じて粉ミルクなどの支給するとともに保健師などの訪問とセットにして定期的な見守りを推進する、保育所などを優先的に利用させるといった対策を挙げた。
●「経済的に困窮→でも頼れるアテがない」実態浮き彫りに
今回の調査対象は、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンが、これまでに実施した支援事業の利用世帯のうち「3歳以下の子育て世帯」に限定し、乳幼児期の貧困にスポットを当てた。対象世帯にウェブアンケートを実施し、うち480人から回答を得た。
回答者は「母親」が97.3%で、世帯状況としては「ひとり親」と別居中などの「実質ひとり親」が合わせて77.3%と多数を占めた。
母親の就業状況については、「パート・アルバイト」が31.9%と最多で、「働いていない」が28.8%と続いた。
「経済的な理由で紙おむつが買えなかった経験がある」と回答したのは49.2%で、同様に「粉ミルクを買えなかった」人も39.6%にのぼった。
また、配偶者・パートナー以外で経済的に頼れる人の有無は、「いない」が71.9%で、「家族・親族」の26.3%を上回った。子育て中の孤独感の有無は「よくある」(34.8%)、「時々ある」(37.5%)が7割以上という結果となった。
セーフティネットとして「生活保護」の利用については、経験者(21.9%)も一定数いたものの、「利用するのに抵抗感があった」(36.7%)、「利用のしかたがわからなかった」(12.5%)、「制度やサービスについてまったく知らなかった」(7.5%)などの回答も。セーブ・ザ・チルドレンは「制度自体の認知が進んでいないことは課題」とする。
希望する支援については、「赤ちゃんに必要な消耗品の受け取り」が86.5%、「児童手当の第一子からの増額」が78.8%など、各種サポートサービスよりも直接的な経済支援を求める声が多かった。
●「孤立する保護者や乳幼児の声にもっと耳を傾けるべき」
セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンは、今回の調査結果を受けて、次の4つの対策を提言している。
(1)困窮世帯への紙おむつや必要に応じて粉ミルクなどの支給 (2)現物支給と自治体担当者の訪問をセットにして定期的な見守りを促進 (3)母子健康と児童福祉の連携で相談しやすい対応の強化 (4)支援求める世帯の保育所などの優先的利用
田代さんは「子どもの食応援などの支援事業への申し込みが年々増えている」「昨年実施した別のアンケートでは、2024年は2023年と比べ『お米が食べられていない子どもが増えている』という結果もあった」と述べ、「困窮度が増している実感がある」との見解を示した。
「支援は、国・自治体どちらにもやっていただきたいです。自治体レベルですぐに支援できるという形も重要ですが、その取り組みが難しい自治体があれば、乳幼児期の支援で格差が生まれることにもなりかねません。そうしたことが起こらないよう、国が自治体のサポートをするということも考えてほしいと思います」(田代さん)
調査に協力した長崎大学の小西祐馬准教授は「非常に困窮する人がこれだけいることに驚いた」と厳しい現状を受け止めたという。
「おむつも粉ミルクも買えない人たちがいるということは改めて注目すべきで、生活保護などの制度があるのに使えていないといった問題も深刻に考えるべき点です。
孤立の問題も非常に大きい。母親だけのひとり親家庭で、夫もいない、実家も頼れない、友人や政府、公的な機関も頼れないという中で子育てすることの心細さやつらさというものを我々はもっと想像すべきだろうと思います。
乳幼児は意見を自分で言えませんが、『もっと食べたい』『もっと清潔になりたい』『もっと遊びたい』と泣いたりすることで要求することはできます。その声に耳を傾けるべきということを、今回の調査で感じました」(小西准教授)
セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンは今後、国や自治体に対して、できる限り対面の形で担当者などへ調査結果や提言を届けていく意向だという。