家族で子どもの七五三に行った際の様子を週刊誌に写真撮影されたことに対して、人気アイドルグループ「嵐」のメンバー、二宮和也さんが11月2日、自身のX(旧ツイッター)に「環境や理由がどうあれ一般人である家族は写すのだけはやめてください」と投稿した。
週刊誌の記事は、二宮さんが10月下旬に家族と神社に七五三に来ていたことを紹介し、二宮さん以外の妻と2人の子どもとみられる人物にモザイクをかけた写真を掲載した。
この報道に対して、二宮さんはXに次のように書き込んだ。
「“自分のプライベートは撮られるのは嫌だけど仕方がない"と自分に言い聞かせながら生きてきた人生でした。勿論、自分の仕事の性質上その方が"生きやすい"というのもあったのでそう理解して生活をしておりました。ただ今回の事に関しては到底理解出来るものではありません。誰もが迎える節目であり、自分にとっても同じく迎えた節目でした」
そのうえで、「負の感情しか生まれてこない今、個人のこの場での発言する事は良くない」などとして、「今回二宮はXをお休みする事にしました」と報告した。
週刊誌が芸能人の家族の写真を無断で撮影してモザイクをかけて掲載することについては、これまでも当事者から疑問や怒りの声が上がってきた。
こうした行為に法的な問題はないのか。芸能人のトラブルに詳しい竹村公利弁護士に聞いた。
●「プライバシー権の侵害になり得る」
ーー報道機関が芸能人の家族の写真を撮って記事に掲載することは法的にどのような問題がありますか?
芸能人と家族のプライバシー権を侵害しているのではないか、という問題になります。
裁判例上、芸能人でも、私生活上の事実のうち一般人の感受性を基準にすると他人への公開を欲しない事柄で、公表されることで不快や不安を覚えるような場合はプライバシー権侵害になります。
今回の件のように、家族に関わる事柄はプライバシー権の侵害になり得ます。家族の生活状況や接し方などは、普通は他人へ公開してほしくない事柄だと思います。
また、芸能人を掲載することで経済的に有益な効果があることに着目した権利であるパブリシティ権の侵害も考えられます。
ちなみに、芸能人という職業を選んだのだからプライバシー権を放棄しているのではないかという考えについては、「一人にしておいてもらう権利」としてのプライバシー権を放棄しているわけではないとするのが判例です。
一方で、表現の自由との関係で芸能人としての芸能活動に対する批判や紹介、慶弔時の報道は尊重、容認されることもあります。
写真はイメージ(sasaki106 / PIXTA)
●モザイクをかければ問題ない?
ーーモザイクをかければ法的な問題はなくなりますか?
モザイクをかけても、普通は公開を欲しない私的な事柄であれば、芸能人のプライバシー権侵害の問題は残ります。
一方、モザイクをかければ家族がその肖像から特定されたり、表情がわかったりする可能性は低くはなりますので、モザイク無しよりは家族の方のプライバシー権侵害の問題は少なくなるように思います。
写真はイメージ(Graphs / PIXTA)
●パブリシティ権侵害の問題も
ーー今回の二宮さんのケースはどう考えられますか?
七五三や結婚、嵐のデビュー記念日という慶弔・芸能活動の紹介という体裁をとってはいますが、記事の内容からすると、芸能活動そのものの紹介や論評というよりは、二宮さんの家族の私的行事の様子や家族に対する二宮さんの表情を公表して記事の注目を集めることが主な目的と考えられます。
一般人である奥さんや子どもの行事の公開となると、神社という公の場であることやモザイクを考慮しても、二宮さんとしては家族の心配をせざるをえなくなります。
普通は公表を欲しないと思いますし、実際にとても不快なことと思います。
また、二宮さんの写真を掲載して記事の表示回数を増やしたり、売上数を伸ばしたりすることは、場合によってはパブリシティ権侵害も問題になってきます。
今回の件について二宮さんがXで強い憤りを表明されるのももっともなことだと思います。