鉄道の駅構内や車両内でタバコを吸える場所が消える中、列車内の座席で堂々と喫煙する高齢男性を写した動画がXで投稿され、話題となっている。
動画では、高齢男性が煙が立ち上るタバコを左手の指で持ちながら二人掛けの座席に座っていた。その後、別の乗客とみられる男性が「タバコ吸ったらダメだろ」と注意されるも、「なんじゃこら」と反発し立ち上がる。
「吸ったらダメなんだよ、電車の中で。禁煙なんだよ」とさらに注意されるも、意に介さない様子でタバコを吸い、注意してきた相手に吹きかけるように煙をはいていた。高齢男性の隣に座っていた乗客が所持していた杖のような棒を取り、注意してきた男性に絡みながら近づいていくところで動画は終わっていた。
投稿者は、「車内でタバコ吸うとか論外やろ」と一刀両断。投稿へのリプライでも、「直ぐに鉄道関係者を呼ばないと」「同じ喫煙者として一緒にされたくない」「昭和からタイムスリップしてきちゃったのかな」と高齢男性を非難する声が多数寄せられていた。
●車内喫煙は法令違反のおそれ
鉄道車両内の喫煙については、かつて特定車両を「禁煙車」として設定するケースなどもあった。その後、長距離列車や特急列車などで喫煙室・喫煙ルームを設けるなどの措置を経て、現在ではほとんどの列車が全車禁煙となっている。
喫煙禁止の列車内でタバコを吸った場合、法的にはどうなるのか。
鉄道営業法は、禁煙の車内で喫煙した場合、科料(1000〜1万円未満)に処すると定めている(34条1号)。科料は刑事罰の一種で、検察庁で作成される前科調書に記載される。
また、健康増進法は、旅客運送事業鉄道等車両について、喫煙専用室以外では正当な理由のない喫煙を禁じている(29条1項5号)。都道府県知事は違反者に対し喫煙の中止命令が出せ、同命令に違反した者は30万円以下の過料が課される可能性がある(同法77条1号)。都道府県によっては、「受動喫煙の防止等に関する条例」を設けて規制しているところもある。
●喫煙注意して刑事事件に発展したケースも
車内喫煙をめぐっては、2022年1月にJR宇都宮線の電車内で喫煙していた男性を注意した高校生が駅到着までの約5分間暴行を受け続けるという傷害事件が発生した。加害者の男性はその後傷害罪などで起訴され、懲役2年の実刑判決が確定している。
車内での喫煙を止めさせようと直接本人に声をかけるのは勇気ある対応だが、トラブルに巻き込まれるおそれは否定できない。
もし深刻なトラブルになった場合には、列車内に設置されている「車内通報装置」を使用する方法がある。名称は「非常通報器」「SOSボタン」など様々だが、いずれも乗務員に対して非常事態を知らせるための装置で、鉄道会社は緊急対応に動いてくれる。
暴行・傷害などの犯罪行為については、警察へ110番通報することも考えられる。受動喫煙を防ごうとするのは重要だが、その場での身の安全あってこそだ。