引退した芸能人の私生活や顔写真はどこまで報じてもよいものか。芸人の有吉弘行さんと妻で元フリーアナウンサー・夏目三久さんのオフショットが6月25日、写真週刊誌『フライデー』のデジタル版に掲載された。
プライベートで外出中の有吉さん家族を撮影した写真は、夏目さんが抱いていた子どもにはモザイクがかけられていたが、夏目さんの顔はそのままだった。第一子の誕生は有吉さんが今年3月に公表している。
今回の写真の撮影時期ははっきりしないが、ごく最近の姿だと思われる。フライデーデジタルでは引退後の夏目さんを同じように複数回取り上げている。夏目さんは日本テレビの局アナを経てフリー転身し、2021年秋に引退するまで活躍した。
記事が配信されたYahoo!ニュースのコメント欄には「引退後、夏目ちゃんの様子は有吉さんが適宜、テレビやラジオで報告してくれてるから、こんな盗撮画像あげなくていいです」「明らかに盗撮だと見られ、大変よろしくないことだと思います」など批判的な意見もみられる。
●有吉さん「盗撮やめてください」
また、フライデーの記事が公開された日の夜、有吉さんは自身のX(旧Twitter)で「盗撮やめてください」などと投稿した。
土下座しますし
— 有吉弘行 (@ariyoshihiroiki) June 25, 2024
芸能人の情報タレコミますし
お金もある程度払います
命令、要求なんでも従いますので
どうか家族の盗撮やめてください。
「土下座しますし 芸能人の情報タレコミますし お金もある程度払います 命令、要求なんでも従いますのでどうか家族の盗撮やめてください」
「盗撮をして。一般人の写真を載せたり生後数ヶ月の子供の写真に未成年の犯罪者みたいにモザイクかけてまで掲載。まあイヤでしょ。 週刊誌の人って家族いないんですね。スゴっ これ訴えると倍返しなんですよね。怖っ!」
引退した芸能人の現在の顔写真は報じてよいのだろうか。肖像権やプライバシー権にくわしい清水陽平弁護士に聞いた。
●執拗につけ狙うなどすれば「平穏生活権」の侵害にも
——引退した芸能人の現在の「顔写真」はどのような場合に報じてもよいと考えられるでしょうか
顔写真は肖像権の保護対象となります。肖像権は、判例上、人格権の一内容として認められています。しかし、何でも侵害になるわけではなく、社会生活上、受忍の限度を超える場合に侵害になるとされています。
社会生活上、受忍の限度を超えるかどうかは「被撮影者の社会的地位、撮影された被撮影者の活動内容、撮影の場所、撮影の目的、撮影の態様、撮影の必要性等を総合考慮」する必要があるとされています(最高裁平成17年11月10日判決「法廷内撮影訴訟」)。
——今回の夏目さんのケースではどうでしょうか
撮影の必要性がどこまであるかについて疑義はあるものの、引退している以上は一般人であると評価できるとはいえ、一定の知名度がある方に注目が集まることはある程度仕方がないところもあるともいえます。
また撮影場所はパブリックなスペースであり、撮影態様も悪質性があるといえるものではないことなどからすると、肖像権侵害とまでいうことは少々難しいのではないか、という印象があります。
ただし、あくまでも今回の写真についてはということであり、どのようなものであっても侵害にならないというわけではありません。また、執拗につけ狙っているような場合であれば、それ自体が「平穏生活権」の侵害とする余地もあるかもしれません。
なお、「盗撮」という指摘もありますが、刑事上問題とされる盗撮は、下着等を撮影するようなケースであるため、今回のケースはそれにはあたらないことになります。