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鳥人間コンテスト、学生に重くのしかかる費用負担…「寄付」による応援広がる
鳥人間コンテストに出場する東工大「Meister」(提供写真)

鳥人間コンテスト、学生に重くのしかかる費用負担…「寄付」による応援広がる

「鳥人間コンテスト」が今年も7月29日から2日間、琵琶湖(滋賀県彦根市)で開催される。毎年、大学や高専などの30チームが、知恵を絞り、魂を込めて制作した機体で空へと飛び立つ。

一方で、参加者の多くは学生。機体の制作費や会場までの運搬費、参加メンバーの交通費などの負担は決して軽くない。鳥人間コンテスト出場までに活動費が数百万円になることもある。部費でまかなおうにも、ここ3年は新型コロナウイルスの感染拡大もあってサークル活動自体が低迷し、財政的に厳しいチームが少なくない。

そんな彼らの活動を支えているのが、外部から支援を募る寄付やクラウドファンディングだ。中には、クラファンで100万円を超える支援を集めるチームや、大学が独自に基金を開設して、寄付を募るなど本腰を入れているところもある。鳥人間たちの「翼」を支える舞台裏をのぞいてみた。(弁護士ドットコムニュース編集部・猪谷千香)

●クラファンで100万円を超える支援

「舞い上がれ!」「夢をのせて大きく羽ばたいて」

熱いメッセージが書き込まれているのは、今年、北海道から唯一の出場となる室蘭工業大学のチーム「鳥人間部」のクラファンのページだ。同大の卒業生や学生の保護者、地域の人たちが、心からの応援を寄せ、その数は150を超える。

鳥人間部はこれまでに4回出場している。今年は滑空機部門で出場、実に7年ぶりに掴んだチャンスだけに、地元・北海道でもメディアが注目するなど、期待が高まっている。

だが、北海道から琵琶湖までの機体の輸送費などの負担は大きく、鳥人間部は今年6月からクラファンで支援を募り始めた。

クラファンの説明によると、活動資金は主に先輩の積立や部員からの部費でまかなってきたが、今年は機体の制作費などですでに使い果たしているという。さらに鳥人間コンテストのために、機体の輸送費や発電機のレンタル料などで90万円はかかる見込みだ。

そこで110万円を目標にしたところ、見事に達成した。現在は170万円を次の目標額に据えて、引き続き支援を募っている(7月30日まで)。クラファンのページには、こんなことも書かれていた。

「実は今回出場する機体の製作は4年ほど前から始まっていました。新型コロナウイルス感染拡大の影響により、大学から部活動の活動禁止が通達され、全く活動をすることができませんでした。この4年間でコロナにより出場の夢が絶たれてしまったたくさんの先輩方がいます。その先輩方のためにも私たちは絶対に飛ばなければなりません」

室蘭工業大の鳥人間部以外にも、徳島大学の「鳥人間プロジェクト」や、東京理科大学の「鳥人間サークル 鳥科」などがクラファンで支援を募っていた。いずれも50万円を超える支援を得ている。

●大学が基金を開設して応援するメリット

鳥人間コンテストに出場するサークルを本腰を入れて応援している大学もある。その一つが、「今年こそ王者復活を」と力が入る東京工業大学だ。

東工大は今年6月、「Meister応援基金」を開設した。9月までの3カ月間、期間限定で寄付を募っている。集まった寄付は、機体制作費や機体の運搬費などに充てられるという。

「新型コロナウイルスでなかなかサークル活動ができなかったのですが、元気に活動してほしいということで、今年度から公認サークルを半期に1つずつ応援する基金を立ち上げることにしました。その第一弾がMeisterです。ものづくりをする工業大学の象徴的な活動でもあります」

そう話すのは、東工大企画・国際部社会連携課の保坂ゆき課長だ。自身も旅行中に琵琶湖で鳥人間コンテストを見て以来、Meisterを応援しているという。

東工大のサークル「Meister」はこれまでに5回も優勝してきたが、近年は残念ながら王者の座を逃している。それだけに「今年こそは」と期待が高まるが、やはり資金繰りは苦しい。

「機体制作の材料費に加え、機体を運ぶのにもレンタカーをしたり、試験飛行するために飛行場を借りたりするのにもお金がかかりますし、琵琶湖までの交通費や宿泊費も必要です」(保坂課長)

Meisterは、人力でプロペラを動かして飛距離を競う「人力プロペラ機部門」に出場する予定だが、パイロットは体を鍛える必要があり、そのトレーニングマシンの購入費などもかかってくる。鳥人間コンテストに出るために、数百万円は必要なのだという。

大学で寄付を募るメリットもある。大学への寄付が所得税法上の寄付金控除の対象となるのだ。

「クラファンだと運営会社に手数料をとられますし、サークルにも負担があります。でしたら、大学として基金を開設したほうが、メリットは大きいです」と保坂課長は説明する。

Meister応援基金にはすでに教職員や卒業生、近隣住民らから寄付が集まっているという。

鳥人間コンテストの本番まであと1日。さまざまな人たちに支えられながら、鳥人間たちが空を舞う。

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