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助けて、このままじゃ熱中症に…ファン付き作業着認めない会社「風紀が乱れる」と却下
写真はイメージ(Ushico / PIXTA)

助けて、このままじゃ熱中症に…ファン付き作業着認めない会社「風紀が乱れる」と却下

職場で熱中症になる人がたくさんいるのに、会社は何もしてくれないーー。弁護士ドットコムにこのような相談が寄せられている。

相談者は、エアコンのない倉庫で働いている。会社が熱中症対策としておこなっているのは塩飴を配ることのみだという。着るだけで涼しくなるといわれる「ファン付き作業着」の使用を上司に頼んだところ「風紀が乱れる」との理由で却下されたという。

自腹でもよいから、せめてファン付き作業着を認めてほしいと相談者は考えている。会社の対応に問題はないのか。村松由紀子弁護士に聞いた。

●塩飴を配るのみでは不十分

ーー会社には、熱中症対策をおこなう義務はあるのでしょうか。

労働契約法5条は、使用者に対し、従業員が安全かつ健康に労働できるよう配慮しなければならないとする安全配慮義務を定めています。熱中症は生死に関わることもありますので、会社が従業員の熱中症対策をおこなうことは、当然この義務に含まれます。

職場の対策に不備があり、従業員が熱中症を発症して損害が発生した場合、使用者は安全配慮義務違反にもとづいて損害賠償責任を負うこともあるでしょう。

ーー相談者の会社のようにファン付き作業着の着用を認めず、塩飴を配るのみの対応は、安全配慮義務違反にあたると判断される可能性はありますか。

厚生労働省の通達「職場における熱中症の予防について」では、服装について次のように記載されています。

「熱を吸収し、又は保熱しやすい服装は避け、透湿性及び通気性の良い服装を着用させること。また、これらの機能を持つ身体を冷却する服の着用も望ましいこと」

どのような作業着を選ぶか、制服の着用を求めるかなどについては、一般的には会社に裁量があります。しかし、熱中症の危険があるにもかかわらず、ファン付きの作業着を従業員が自腹で用意することまで拒絶するのは、安全上などの合理的な理由がない限り、裁量権の逸脱があるように思います。

相談者が言われた「風紀が乱れる」という内容が具体的に何を意味しているのかは不明ですが、仮に統一性がなくなるということなら、会社が統一性のあるものを用意するべきです。 なお、通達では「定期的な水分及び塩分の摂取の徹底を図る」ことを求めており、塩飴を配るという対策だけでは不十分といえます。

●会社にバレずに労基署に相談することはできる

ーー相談者は、改善されなければ労働基準監督署(労基署)に相談することも検討しているようですが、会社にバレるのではと不安なようです。

労基署には守秘義務があり、匿名で相談・通報をすることができます。ただし、告発内容や事業所の規模によっては、結果として会社にバレてしまうリスクはあります。

知られたくないことを明示し、会社の規模に応じて、どのような方法が望ましいのかを労基署と相談するのがよいでしょう。

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

プロフィール

村松 由紀子
村松 由紀子(むらまつ ゆきこ)弁護士 弁護士法人クローバー
弁護士法人クローバーの代表弁護士。同法人には、弁護士4名が在籍する他、社会保険労務士4名、行政書士1名が所属。企業法務を得意とする。その他、交通事故をはじめとする事故、相続等の個人の問題を幅広く扱う。

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