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「裁判所の不正確な調書」弁護士の8割が経験「爆弾投げる」が「バナナ投げる」になったことも
裁判所がつくる調書を不正確だと感じたことがある弁護士の割合(調査結果から編集部作成)

「裁判所の不正確な調書」弁護士の8割が経験「爆弾投げる」が「バナナ投げる」になったことも

弁護士ドットコムが会員弁護士を対象に、裁判所が作成する調書に不正確な点があると感じた経験があるかを聞いたところ、120人が回答し、8割以上が「ある」と回答した。

内訳は次の通り。

・よくある:17.5%
・ときどきある:40%
・まれにある:23.3%
・ない:19.2%

事件別でみると、民事事件(83.5%)、刑事事件(36.1%)、家事事件(26.8%)の順に多かった(複数回答)。

●意味が真逆の反訳も

弁護士の自由回答もみてみたい。まず、なぜ不正確な調書ができるのか。音声を文字起こしにする以上、うまくいかない場合もあるようだ。

「反訳で不明瞭な発音を違った意味に記録したことがある」
「コロナでマスクをしての証言で、証言調書が滅茶苦茶だった。異議を出して、訂正してもらった。記憶で異議を出すので不安だ」

ただし、調書が不正確だからといって、必ずしも裁判に影響するわけではない。

「当方の主張立証に影響がなかったので、何もしなかった」
「『思っていない』を『思っている』と真逆の意味で調書に書かれてしまった。ただし、文脈からは正しい意味が分かったため、影響はなかった」

●「あの書記官の名前、今も忘れられない」

一方、意図的に不正確になっているケースもある。たとえば、次のような具合だ。

「裁判所がそのとき関心のあることしか書かない。攻撃防御上の大事なことが記載されない」
「裁判官の補充尋問につき、明らかな誘導が行われたり、代理人に対して不公平な発言があったにもかかわらず、当該発言が調書に記載されていなかった」
「裁判所に都合が悪い裁判官の発言が記載されていないことがあった」

しかし、不正確な記録で人生が左右されてしまう可能性もある。

「要約調書では混乱した証言を、整理して理路整然とした証言として書かれたことがある」
「否認事件における証人が質問外においてではあったが、涙を流しながら『被告人がいいひとだった』と話したことがあり、この内容を調書に入れるよう調書異議を出したが却下された」
「執行猶予見込みの一審刑事公判で、要旨調書が作成されていた。しかし要旨調書に弁護人が重要と考えていた情状事実がいくつか記載漏れがあった。

一審判決が予想に反して実刑になったことから控訴した際、公判調書を取り寄せて一審の情状証人の尋問や被告人質問のやり取りを確認したところ、記載漏れが判明した。

その結果控訴審では、記載漏れをしていた情状事実を一から裏付け証拠を添えて主張立証し、最終的に原判決取消し、執行猶予判決が得られた。要旨調書を作った一審の書記官の名前は今も忘れていない」

調書の訂正を求めても、必ずしも応じてもらえるわけではない。

「裁判官がトンチンカンな補充尋問(介入尋問)を行ったものの、その質問に対する供述が当方に有利であり、当方の証拠として使用するため調書を謄写したところ、裁判官が全く異なる質問をしていたように調書が作成されていたことがあった。

調書の訂正を申し立てるとともに録音データの開示を求めたところ、いずれも拒否された。裁判官の質問が正確に記録されている、録音データの開示を認める法令はないとの理由だった」

●法廷録音などを求める声

こうしたことから、法廷内での調書の正確性を担保する手段を求める声が多かった。

「調書を不同意にした結果、他の公判での証言を録画したDVDが採用されるケースでは、当該DVDが公判で再生されるため、調書の誤りに気付くことができる。

調書では『バナナを投げたり』となっていたが、実際は『爆弾を投げたり』だった(笑)。ただ通常は誤りに気付くことはまずないと思う。その誤った調書に基づいて判断がなされることは大変問題であり、何らかの形で正確性を担保すべきだ」
「速記官による速記を求める」
「発言の内容についてカットされている、正確な逐語による調書が必要である」
「正直、理解に苦しむ話をしてくる裁判官は存在するため、少なくとも公開の法廷でのやり取りは全件録音して欲しい。後ろめたい訴訟指揮の抑止力にもなると思う」

●調書が不正確なのは工夫が足りない?

このほか、正確な調書にならないことを前提に、工夫を重ねるしかないという意見もあった。

「自分が思ったとおりの調書になっていないときは、明らかな誤記を除いては、自分の尋問が至らなかったのだなと反省する。書記官の記載が追いついているか確認しながら尋問をする、絶対に残してほしいところは方向を変えて重ねて質問するなど工夫が必要だと思う。

また、記載されるべきと思っている点が省かれている場合は、裁判所が争点と関連がないと思っている点を延々尋問している場合もあると思う。尋問前の争点形成の段階で、ここは争点なんだと裁判所に認識させておく必要があると思う。

自分はやったことがないが、後の準備書面や弁論要旨で、『調書には○○と記載があるが、証人は○○と答えた』などと記載する方法もあると思う」

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