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 「少しでもほっこりしてほしい」大阪高裁の書店は、癒し本推し? ネコ写真集やココロの本も
大阪高裁(白熊 / PIXTA)

「少しでもほっこりしてほしい」大阪高裁の書店は、癒し本推し? ネコ写真集やココロの本も

書店の入口近くにある特設コーナーは、その店のこだわりが一番わかる店の顔である。見るだけで癒される猫の写真集や、日々の緊張をほぐすエッセイ本が店頭に並ぶこの店は、街中の本屋でない。大阪高等裁判所1階で営業を行っている大阪高裁内ブックセンターだ。

コーナー作りの担当者は「多忙な中、お越しいただくお客様に、少しでもほっこりしてもらえたらと思って作りました」と狙いを語ってくれた。法律書が並ぶ店内において、そのインパクトは絶大であり、売れ行き好調だという。

入口の特設コーナー(筆者撮影) 入口の特設コーナー(筆者撮影)

担当者の言葉を嬉しそうに聞いていたのは、店長の人見泰司さん。この入口の特設コーナーは、「若い人の流行に敏感なセンスを信じたい」として、常時企画を任せている。その他、店長のノウハウが詰められた店舗のこだわりを楽しそうに話してくれた。(裁判ライター:普通)

●売れる本が分かるには3年かかった

人見さんは、全国に展開する大型書店で長年、勤務してきた。一般向け書店の「社会」の棚を担当していたが、法律に詳しい訳ではなかったという。そのため、ブックセンターに転職してまず行ったのは法律書に関する知識を増やすこと。「弁護士さんとかの方が法律に当然詳しい訳ですから物怖じする必要もないですし」と、とにかく人に聞き、自身でも情報収集に徹して知識を増やす努力をした。

人見泰司店長(筆者撮影) 人見泰司店長(筆者撮影)

「売れる本というのは、ネットの引用でなく、内容がわかりやすく情報に信用性がある本。その中から『これは売れる』というのがわかるのに3年かかりました」

インターネットから得られる情報が速報性に秀でているのであれば、紙の書籍は「過去、現在、未来の錠を繋げて知識を広げるのに使って欲しい」と、扱う書籍の有用性には自信を持つ。

そんな本をよく知る人見さんは、出版社にも頼られる存在だ。

2019年に出版された『こども六法』(弘文堂、山崎聡一郎著)という人気書籍がある。この本をどう売るべきか、出版社の担当者が人見さんに問い合わせをしたという。「いい本だとは思っていたので、お店の展開場所の提案などをしました」と語ってくれたように、商品とお客を結びつけるセンスはやはり書店員ならではのものだろう。

●もっと面白いお店を作っていくために

「最近、よく売れているのは1月に発売された『面会交流 裁判官の視点にみるその在り方』(新日本法規)です。類書も少なく、元大阪高裁の裁判官である松本哲泓弁護士の執筆ということもあり、人気です」と語るこの本は入口付近で大きく展開されている。

売れると思った本は大きく展開するし、漫画であっても置く。法律書を多く展開する店舗に、漫画『九条の大罪』の真鍋昌平さんの色紙があるのにいかにも驚いた。そのほかにも、大阪の地理や歴史の本などもよく売れるという。

真鍋昌平さんのサイン(筆者撮影) 真鍋昌平さんのサイン(筆者撮影)

法律書に限定せず、多様な本を展開する理由として、大きく2つ聞くことができた。

あるスタッフは「新人の裁判所職員さんを先輩職員さんが所内を案内していたんです。そのとき店の前で『ここは法律書しかありません』って言われてしまって、『いろいろあるよ~』と思って、もっとアピールしなきゃと」と教えてくれた。

品揃えのこだわりはもちろんのこと、前述の色紙のように魅せ方にも工夫を凝らしていることが店に入るとよくわかる。

もう1つは、人見さんのとある悩みから来ていた。

「一番問い合わせが多いのは、法改正の報道がされたテーマなんです。でも、そこから国会で通って、書籍化するとなるとどうしても発行まで時間がかかってしまって」

そういった状況で、お客の関心を損なわないためにも、多様なチャレンジを続けているのだ。

「大きな本屋ではないけど、変わった面白いお店です。足りない部分もあると思うけど、お客さんの声には出来るだけ応えてもっと面白いお店にしたいと思ってます。是非お店に来て、もっとこんな本が欲しいと気軽に声をかけてくれたら嬉しいです」

【ライタープロフィール】 普通(ふつう):裁判ライターとして毎月約100件の裁判を傍聴。ニュースで報じられない事件を中心にTwitter、YouTube、noteなどで発信。趣味の国内旅行には必ず、その地での裁判傍聴を組み合わせるなど裁判中心の生活を送っている。

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