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太地町のイルカ追い込み漁は「ショーに供給するためだ」、黒塗り情報開示をNGOが批判
黒塗りの文書を掲げて説明する(右から)ヤブキ氏、吉田弁護士(2022年12月27日、弁護士ドットコムニュース撮影)

太地町のイルカ追い込み漁は「ショーに供給するためだ」、黒塗り情報開示をNGOが批判

和歌山県太地町でイルカの追い込み漁調査をしている自然保護団体のNGO「Life Investigation Agency(LIA)」が、町や漁業協同組合を相手取り、情報公開などを求める訴訟を提起している。

原告で太地町民のLIA代表ヤブキレン氏と代理人の吉田京子弁護士が12月27日、東京都内で記者会見し、現状を説明した。

ヤブキ氏は「(漁は)伝統継承でも、食文化でもありません。イルカショーに供給する世界への生体販売のためです。生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)でも生態系は危機的状況だと指摘された。鯨類が守られるのは世界のスタンダードです。日本も対応することが求められている」と強調した。

●知る権利の侵害と器物損壊

原告が起こしているのは、町に対する公文書非開示決定処分取り消し等請求訴訟と、漁師と漁業協同組合に対する損害賠償請求訴訟だ。

ヤブキ氏はこれまでの独自調査や県への情報公開などから、追い込み漁で捕獲したイルカは業者を通じて中国などに生体販売されていると指摘。税金で運営し、飼育などをしている「町立くじらの博物館」も、保護や学習ではなく販売が目的となっている可能性があると考え、2021年9月1日、条例に基づいて開示請求に踏み切ったが、ほぼ黒塗りだった。これは町民の「知る権利」の侵害と訴えている。

吉田弁護士は「販売、購入の書類だけでなく、職務として書類を作成した者の名前まで非公開です。非開示の理由も示しておらず、法律上許されません」と説明する。

また、男性漁師と「太地いさな組合」への損害賠償請求は、原告らが調査のために空から撮影していたドローンを2022年2月1日に意図的に攻撃されたというもので、約173万円を求めている。地検にも8月、器物損壊事件として刑事告訴し、受理されているという。

原告側が撮影した動画には、漁師が金属棒をドローンに向けて投げる様子が写っているが、漁師側は「故意ではなく偶然当たった」などと主張。これに対し、原告側は許可を取って撮影しており「違法でも不当でもない」と反論する予定だ。

●「過激な活動家」扱い 議論の土台つくりたい

太地町は毎年、海上保安庁や警察と合同で「活動家が違法行為を行う」ことを想定した、ヘリや大型の巡視船による警備・保安訓練を実施している。

ヤブキ氏はエンジン付きの船での抗議活動や刃物を持った活動家を見立てた大規模な訓練が行われていると説明。ヤブキ氏に対して県警の常時巡回や張り付き監視などもされており、あたかも活動家が違法行為を繰り返しているかのような印象を町民に与えているとする。

「特に鯨類の情報について、この町は閉ざされています。情報が明かされなければ議論もできない。輸出の情報が出てこないのは、貿易上でも問題があるのではないでしょうか。まずは議論するための足がかりにしたいと裁判に訴えました」

LIAは2019年にも追い込み漁が動物愛護法違反に当たるとして、漁師らの許可処分の取り消しを求め提訴。約2年間ほど、高裁まで闘ったが却下されているという。

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