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弁護士法人が法テラスに事実上勝訴 事件終結後に交付金減額、返還求められる
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弁護士法人が法テラスに事実上勝訴 事件終結後に交付金減額、返還求められる

事件終結後に出された、立て替えた着手金等の半額を返還するよう求める決定をめぐり、青森県の弁護士法人と日本司法支援センター(法テラス)が争っていた裁判で、このほど調停が成立した。法テラス側が請求を放棄することになり、返金は不要となった。

争っていたのは、弁護士法人「青空と大地」(代表社員・橋本明広弁護士)で、事実上の勝訴といえる。

●示談交渉終結後、法テラス「半額返還を」

事件の概要はこうだ。2020年、同法人の所属弁護士が慰謝料200万円を請求する損害賠償請求事件を受任した。

この依頼者は過去にも法テラスを利用しており、償還を一部滞納していた。このことを援助申込後に法テラスから知らされた同法人は、援助開始に先立ち、依頼者から債務支払の確認書を法テラスに提出するよう求められ、協力した。法テラスは立て替え(代理援助)を決定し、着手金など10万8000円を交付した。

交付後、同法人の弁護士は相手方に対し、書面で損害賠償請求したが、反応がなかった。そのため、示談交渉を終結させ、依頼者と訴訟提起の打ち合せをしようとしたところ、依頼者から訴訟の委任はしないとの意向が示された。

そこで、法テラスに示談交渉事件の終結報告書を提出したところ、法テラスは事件の処理状況から、「特に処理が簡易なもの」にあたるとして、着手金及び実費を半額に変更。同法人に対して、差額の5万4000円の返還を求めた。同法人は不服を申し立てたが、決定は覆らなかった。

同法人は2021年11月、事件終了後に既に立て替えた着手金などの金額を変更するのは違法だとして、青森地裁に債務がないことを確認する訴訟を提起。法テラスも翌2022年1月に返還を求めて反訴した。

●弁護士「公正な運用につながれば」

裁判では主に、法テラスの運用を定めた「日本司法支援センター業務方法書」の33条について、事件終結後の事後的な返還が想定されているかどうかが争われた。以下、条文を引用する。

「地方事務所長は、事件進行中に、援助開始決定又はその後の決定において定めた事項(立替金の償還方法及び償還の猶予を除く。)の全部又は一部を変更することが相当と認めるときは、職権で、地方扶助審査委員の審査に付し、その判断に基づき、援助開始決定又はその後の決定において定めた事項を変更する決定をすることができる」(同条3項)
「地方事務所長は、第1項又は前項の規定により援助開始決定又はその後の決定において定めた事項を変更する決定をした場合において、第30条第1項第1号又は第2号に掲げる額を減額するときは、当該決定に併せて、受任者等に対し、既に交付した金銭につき、返還を求めるべき額及び支払方法を定めることができる。この場合において、被援助者は、その限度で立替金の償還を免れる」(同条4項)

判決にはいたっていないが、結果としては「終結後の減額は認められない」という、法人側の主張が認められた形になる。

法人代表の橋本弁護士は、「今回のケースは、私にとって一般民事では初めてでした。ほかでも聞いたことがありません。本件に限らず、近年は立替金の残金が増えないよう、法テラスが弁護士に不利益な決定をすることが増えています。今回の結果が公正な運用につながればと思っています」と話した。

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