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宗教2世、脱会後も約半数が「一般社会で生きることに罪悪感や背徳感」 アンケート調査、苦悩の実態明らかに
会見に出席した荻上チキさん(社会調査支援機構チキラボ提供)

宗教2世、脱会後も約半数が「一般社会で生きることに罪悪感や背徳感」 アンケート調査、苦悩の実態明らかに

特定の信仰や信念を持つ家族の影響下で育った「宗教2世」(3世以降を含む)を対象とした民間団体によるアンケート調査で、回答者の7割以上が、社会問題を起こした宗教団体への解散命令や法人格の取り消しを希望していることがわかった。

調査を実施したのは「社会調査支援機構チキラボ」。今回の調査は、安倍元首相銃撃事件以降、宗教2世の苦悩がクローズアップされる中、宗教2世当事者の体験を可視化し、社会で議論が必要な論点を共有するためのものと位置づける。

同団体所長の荻上チキさんは11月1日、都内で開かれた会見で、今回の調査で「報道で取り上げられている方々の意見が決して『特殊な声』ではないことがわかった」とし、一定の数字的根拠が示されたことで、政治の場やメディアなどでより議論を深めることができるのではないかと話した。

●子どもが「親からも教団からも」離れられる制度を

調査は2022年9月9~19日の間にウェブ上のアンケートフォームで実施。有効回答1131件を対象に分析した。

回答者は男性(343人)より女性(741人)が多かった。回答者の所属するまたは所属していた宗教団体のうち、創価学会(428人)、エホバの証人(168人)、旧統一教会(47人)が上位3つだった。「2世」(604人)だけでなく、「3世」(431人)も相当数いた。

回答者が求める「宗教をめぐる社会的な改善」については、「子どもでも親から教団から安全に離れられる制度」(73.0%)が最も多く、「社会問題を起こした宗教団体への解散命令や法人格の取り消し」(71.9%)、「カルト団体の定義と規制法」(67.3%)、「宗教トラ ブルについての法律相談」(62.5%)が続いた。

宗教2世のうちすでに脱会した回答者の半数以上が「家族関係の悪化」(58.3%)を経験。「宗教的価値観が残っているため、一般社会で生きることに罪悪感や背徳感を味わうこと があった」(45.9%)との回答も目立つなど、脱会してなお社会生活への適応面で困難を感じる経験があったとする。

●「教団内の風習や風土」にも注目すべき

特に回答の多かった「創価学会」「エホバの証人」「旧統一教会」の3団体に関しては、任意の自由記述項目に対し、記入された団体名をアフターコーディングして集計した。

同団体がこの集計を分析したところによると、旧統一教会やエホバの証人は、性に関する規範意識やタブー意識、マイノリティに対するネガティブな体験・価値観が高い傾向にあったという。

たとえば、 エホバ2世と旧統一教会の2世回答者については、8割以上が恋愛・交友関係の制限があったと回答した。特に、旧統一教会2世回答者は、大人になっても恋愛・交友関係を制限された傾向が強いという。

旧統一教会の2世回答者については、家計などの暮らしむきに関する自己評価が他の2世回答者と比べて高所得または低所得の割合が高い、献金要求があったという回答の割合が高い、という特徴もあったとする。教団から要求されたという割合は70.2%、家族から要求されたという割合は63.9%だった。

荻上さんは、教義だけでなく、教団風土やコミュニティの理念などにも注目しなければならないと話す。

「たとえば、仏教系の宗教で、とりたてて男女の区別を強調していないにもかかわらず、男性部門と女性部門に分かれて、男性部門は力仕事を、女性部門は玄関での出迎え仕事といった扱いがおこなれていることもあります。

そういった扱いは教義とは違うのですが、風習や風土としておこなわれているという宗教が多くありました」

●宗教2世ではない人も「もっと議論深めてほしい」

同団体は、アンケート調査から、こども救済の観点からの社会的対応が必要であることが確認されたとして、虐待定義の拡張、消費者被害の救済、子供コミッショナーや子供シェルターの確保など、より一層の支援拡充が欠かせないとする。

一方で、荻上さんは、宗教2世問題がクローズアップされることで、宗教全体に対して疑問視するような声につながることを懸念する。

「『宗教2世は不幸だ、宗教は毒だ』といった声があると、当事者は生きづらくなります。宗教団体から離脱したいと思っている2世当事者にとっても、苦しい状況になりかねません。

相談しようと思っていた相手が宗教に対して偏見を持っていると、『えっ、宗教…?』という反応になって、そもそも相談に乗ってくれなくなるということもありえます」

宗教2世当事者でないという荻上さんは、調査の意義について、「宗教2世の人ばかりを矢面に立たせるのではなく、当事者ではない自分のような人が、調査を伝えるというような方法で、世の中に議題設定することも重要ではないか」と話し、政治の場やメディアでの議論の活性化を訴えた。

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