ウクライナ侵攻報道に触れるほど抑うつ傾向が増加、荻上チキさん「注意喚起が必要」
荻上チキさん(厚生労働省での記者会見より)

ウクライナ侵攻報道に触れるほど抑うつ傾向が増加、荻上チキさん「注意喚起が必要」

評論家の荻上チキさんらが6月1日、厚生労働省で記者会見を開き、ロシアによるウクライナ侵攻後、国内で抑うつ状態の若年、高齢女性が増える傾向にあるという調査結果を発表した。荻上さんがつくる一般社団法人「社会調査支援機構チキラボ」が調べた。

ウクライナ侵攻の報道を視聴した時間と抑うつ状態の関係も明らかにした。荻上さんは「メンタルヘルスの悪化は、脳や心臓疾患やうつ病のリスクを高めます。報道する側は視聴者がセルフケアができる情報提供や、注意喚起することが必要だと考えています」と話している。

●若年女性の3割超が中度以上の抑うつ状態

調査は5月9日から5月11日にかけて、全国の18~79歳の男女1000人に対してウェブアンケート方式で行い、865人から回答を得た。

ロシアによるウクライナ侵攻が始まる前の2月上旬に行った調査と比べると、中度以上の抑うつ状態の人が、若年女性(18~39歳)では35.1%(9.4ポイント増)、高齢女性(60~79歳)は12.5%(5.7ポイント増)といずれも増加傾向だった。また、高齢女性は中度以上の不安感を抱えている人も12.5%(9.1ポイント増)と増えた。

「全てがウクライナ侵攻の影響とは言えませんが、特に高齢女性の精神的健康が悪化していると言えます」(荻上さん)

また、アンケートでは、テレビや新聞、インターネットメディアでウクライナ侵攻の報道を視聴する時間と、メンタルヘルスとの関連も調べた。メディアの種類別に見ると、NHKや民放のワイドショーや夜の報道番組といったテレビで視聴している人が多く、全体の40%以上が週に1時間以上ウクライナ関連の報道を視聴していた。

また、ウクライナ侵攻に関連した視聴時間が長いほど、抑うつや不安感、孤独感を抱えている人が多かった。

画像タイトル 調査結果より

一方で、家族や友人とウクライナ侵攻について話している人ほど孤独を感じず、人生の満足感も高いことが分かった。

画像タイトル 調査結果より

報道が与える影響について荻上さんは「メディアに長時間触れることで、精神的健康を悪化させる可能性があるとも言えます。メディアはウクライナ侵攻を報じると同時に、メンタルヘルスの重要性を伝えたり、心のケアができる機関の情報を提供したりすることも大切です」と語る。メンタルヘルスが悪化すると、脳や心臓の疾患や、うつ病のリスクが高まるため、軽く考えてはいけないという。

●同じテーマでもコンテンツによって受け止め方は変化する

荻上さんによると、メディアでストレス度合いが高い情報を得た後に人がとる行動は、メディアの中身によって変わるという。

「例えば貧困をテーマにした番組で、当事者のエピソードだけを発信する内容であれば、視聴者は当事者をバッシングする傾向があります。視聴して受けたストレスを向ける先が見当たらず、距離をとることで心を守ろうとするからです。一方で、貧困に関する統計や政策への議論も入れた『テーマ型』の内容であれば、視聴者は番組の構成を吟味しようとするので、個人への批判が減るなど、視聴者の着地の仕方が変わってくるのです」

荻上さんらは、今後も災害や戦争といった報道に触れることで受けるストレスについて、視聴者の自覚を促し、対応策を発信していく考えだ。

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