反省文を書いたらスピード違反の罰則は軽くなるのか——。弁護士ドットコムには交通違反をした時の反省文に関する相談が複数寄せられています。
ある男性は、東京都内で50キロの一般道を108キロで走行し、スピード違反で取り締まりを受けました。
当時について「親が倒れたと連絡があり、早く帰りたい一心で会社も早退し、帰路につきました」と話す男性。対向車がこない一車線のトンネルで、前方車両もいなかったので「『ここなら大丈夫』と身勝手な思い込みから、速度を上げてしまいました」と話します。
違反内容については全て認めていますが、親の医療費を払いながら送り迎えをしているため、罰金を10万円払った上で、90日の免許停止になるのは「厳しいものがある」といいます。
そこで、男性は意見聴取の際に「違反の事実を認める内容」や「違反した理由」「親の治療のために費用と免許が必要な点」などを盛り込んだ上申書を提出しようと考えています。
これにより、罰金額が減額したり免許停止を免れたりすることはあるのでしょうか。福永敬亮弁護士に聞きました。
●反省していることも「量刑」の考慮事情の一つ
——今回の相談者は、一般道を超過速度50キロ以上で走行したそうです
今回のケースは、罰金の支払いという刑事処分と、免許停止という行政処分のどちらも問題になりえます。刑事処分と行政処分は、全く別の手続なので、両方の手続にそれぞれ対応する必要があります。
——刑事処分はどのような流れになりますか
刑事処分は、まず警察官が捜査をし、その後、検察庁に送られて検察官が取調べ等をして、起訴して刑事裁判にするか、不起訴にするかが決まります。
刑事裁判になった場合、50キロ以上の超過速度で一般道を走行したことには争いがないとすると、刑罰の重さをどうするかという「量刑」が主な争点になります。
量刑を決めるに当たっては、前科前歴の有無が重要になります。例えば、過去にも同じような速度超過で罰金刑を受けている人は、再度同じことを繰り返したとなれば、当然、量刑も重くなります。
他方で、初犯であり、真摯に反省し、やむを得ない事情があり悪質性が低い場合には、そうした事情も量刑の判断にあたって考慮されることもあります。
そのため、今回の相談者が、前科前歴がなく、反省文を書いて真摯に反省し、具体的な状況にもよりますが親が倒れて一刻も早く帰宅しなければならないという事情があれば、そうした事情が考慮されて、罰金額が軽減されることも想定されます。
●上申書が考慮されることもありうるが…
——行政処分はどのような流れになりますか
行政処分は、公安委員会という行政庁が、免許の取消しや停止といった処分を行うことをいいます。行政処分の場合も、まずは警察官が違反の状況を調べることになります。
その後、免許を取り消したり、免許を90日以上停止しようとする場合には、公安委員会が処分に係る者に対して「意見の聴取」をしなければならないとされています。
——相談者は、この「意見の聴取」の際に、上申書を提出しようと考えているとのことです
こうした上申書の内容が考慮されて、免許停止の期間が、例えば90日間から60日間に短縮されるということもありえます。
また、免許停止処分が決定した後に、停止処分者講習という有料の講習を受講し、筆記試験で良い成績をとれば、停止処分の日数が短縮されることになります。
以上のように、反省文等の提出によって、罰金の軽減や免許停止期間の短縮といった余地がないわけではありませんが、必ずしも認められるわけではありません。
何より交通法規に違反する運転をすれば、取り返しのつかない大事故を引き起こしかねません。安全運転を心がけ、楽しいカーライフを送りましょう。