コインパーキングで誤って、他人の駐車代金を精算してしまうケースは少なくありません。
元バレーボール日本代表の栗原恵さんが、「Smart FLASH」のインタビュー記事(3月24日配信)で、うっかりミスしたエピソードを語っています。
「先日コインパーキングの精算をしたら、思ったよりかなり高額で。しかもバーが下がってない。よく見たら、隣の車のバーが下りてました(笑)」(引用)
具体的な金額や、その後のてん末は明かされていませんが、もしも、返金を求めた場合、お金は戻ってくるのでしょうか。冨本和男弁護士に聞きました。
●法的には、お金は戻ってくる?
ーー精算機のボタン押し間違えなどによって、他人の駐車代金を支払ってしまった場合、法的には返金されるのでしょうか
まず、コインパーキングからは、法的には返金されないのではないかと思います。
勘違いによって他人の駐車代金を精算した人が、勘違いを理由に領収証を証拠として、代金の返還を求めること自体は認められます。
しかし、そうした場合でも、事情を知らない債権者(コインパーキングのオーナー)が担保を放棄し、その債権(本来駐車場代金を支払うべき人に対する権利)を失ったときは、返還請求できないとしています(民法707条1項)。
勘違いによって支払った人よりも、精算されたと信じた債権者を保護すべきと考えられるからです。
駐車料金はその車に関して生じた債権ですから、債権者は、駐車料金の支払いを受けるまでは車を返さないと言える権利(留置権)を持っています。ロック装置やゲートによって車を留置し、駐車料金の精算が行われた場合にロック装置を解除したり、ゲートを通過できるようにして担保(留置権)を放棄していると考えることができるのではと思います。
勘違いによる精算でも、ロック装置が解除され、ゲートを通過されれば、コインパーキングのオーナーは、本来駐車場料金を支払うべき人に請求することが難しくなってしまいます。
また、こうした事態を想定して「間違えによるご返金はいたしかねます。」と定めた約款も見受けられますが、無効とまではいえないのではと考えます。
ーーそれでは、オーナーへの返還請求が難しいとすれば、支払いによってロック解除された車の持ち主に対する請求は可能でしょうか
第三者弁済として、管理者への弁済が有効となる場合、間違って精算をした人は、ロックを解除された車の持ち主に対し、支払いを免れた駐車料金を不当利得として返還請求することができます(民法707条2項)。
●すぐ事情を説明すれば、返金してもらえる場合も
もっとも、精算後すぐであれば本来駐車場料金を支払うべき人の車が駐車場内にまだあるわけですから、コインパーキングの管理者に連絡することによって返金してもらえる場合もあるのではと思います。