ダイヤモンド社が運営するウェブサイト「ダイヤモンド・オンライン」の記事で、名誉を毀損されたとして、記事を書かれた会社側が訴訟を起こしている。9月16日に大阪地裁で第一回口頭弁論が開かれた。
訴えたのは、「うどんすき」を考案したことで知られる大阪の老舗「美々卯」とその社長。記事の筆者や編集長、ダイヤモンド社に対して総額1100万円や記事の削除、謝罪広告の掲載を求めている。
問題となった記事は、美々卯とのれん分けした別法人・東京美々卯の解散をめぐるもの。
東京美々卯は無借金経営だったが、新型コロナウイルスの影響から、「手元資金が充分ある間に」として、5月20日に首都圏6店舗をすべて閉鎖した。従業員への告知から1カ月ほどの解散で、職を失った労働組合員の一部が解雇無効などを求めて別の裁判を起こしている。
当該記事では、従業員らへの取材や東京美々卯の株の43.6%(2019年8月期の決算資料より)を美々卯が持っていたことなどから、解散には美々卯の薩摩和男社長の強い意向が働いたとして、別の思惑をもった「コロナ便乗解雇」ではないかと指摘していた。
記事は公開後、会社側の抗議により一部記述が削除されたものの、会社側は訂正前はもちろん、訂正後も従業員をぞんざいに扱う会社・社長という印象を読者に持たせるなどとして、社会的評価を低下させるものであることに変わりはないとしている。
また、記事では東京美々卯側から「社長の関与はない」とするコメントを引き出しているものの、薩摩社長本人への取材がなかったことも問題視している。
●一部削除も「名誉毀損を認めたわけじゃない」
一方、記事を執筆したジャーナリストの北健一氏は、一部削除について次のように主張。
「断定的な読まれ方を避けるため、自主的に削除しましたが、削除部分で適示した事実は真実で、論評部分は真実にもとづく常識的な内容です。虚偽なり名誉毀損を認めたものではありません」
また、訂正後の内容でも、会社・社長の社会的評価を下げるという主張については、「東京美々卯解散が正しいことなら、関与したと書かれても、社会的評価は下がらないでしょう」と反論した。
【追記】
この裁判は2022年3月23日、大阪地裁(横田昌紀裁判長)で、損害賠償と謝罪広告はなし、記事は削除という内容で和解が成立した。