2019年11月13日 10時17分

大多数が受かる「二回試験」に怯える日々、衝撃の死体解剖…司法修習生のリアル

大多数が受かる「二回試験」に怯える日々、衝撃の死体解剖…司法修習生のリアル
座談会で語り合う司法修習生たち

日本で法曹資格(裁判官、検察官、弁護士の法曹三者になるための資格)を得るには、司法試験に合格した後、さらに「司法修習」という1年間の研修を受ける必要があります。

司法修習は1年間にわたって行われ、そのスケジュールは、以下の通りになっています。

・9月 司法試験合格発表

・12月 導入修習(司法研修所で行われる座学の研修)

・1月〜8月中旬 実務修習(配属庁や弁護士事務所で行われるOJT。「民事裁判」「刑事裁判」「検察」「弁護」の4つのカリキュラムが2ヶ月間ずつ実施される)

・8月中旬〜9月 集合修習(司法研修所で行われる座学の研修)

・10月〜11月中旬 選択修習(複数プログラムの中から希望するものを各自選択できる) ※A班の場合。B班では集合修習と選択修習の時期が入れ替わる。

・11月下旬 二回試験(司法修習考試。司法修習の最終試験)

その実態は、どのようなものなのでしょうか。まさに今、司法修習を行っている、72期司法修習生の生の声を聴いてみました。

【座談会参加者(全員仮名)】

・熊田さん(男性・29歳) ロースクール(未修)出身。受験回数は4回

・鳥山さん(男性・53歳) 銀行に27年間勤務。ロースクールには通わず、予備試験に3回目で合格。司法試験受験回数は1回

・馬場さん(男性・31歳) ロースクール(未修)出身。受験回数は3回

・犬飼さん(女性・27歳) ロースクール(未修)出身。受験回数は1回

●「女子が男子の部屋に行くのはOK」「皆けっこう飲んでるよね」

―ずばり、修習って、楽しいんですか?

熊田:楽しいです!

鳥山:羽目を外す人もいますね。この前も、研修所(司法研修所の通称)の寮で吐いていた人がいました。

―寮の生活も楽しいんですか?

馬場:寮は何より、研修所に通うのが楽!

―司法研修所は埼玉県和光市にあって、アクセスはかなり悪いようですね。皆さん寮に入るんですか?

犬飼:地方で修習をしている人は全員寮に入りますが、東京修習だと、半分くらいの人は自宅から通っています。キャパ的に、寮に全員入ることはできないので、入寮の希望を出しても抽選に落ちることもあります。

鳥山:そういえばこの間、男子部屋に女子が入っていくのを見たなぁ。

―部屋の行き来は自由なんですか?

鳥山:女子が男子の部屋に行くのはOKです。男子は、女子部屋がある階への立入り自体が禁止されています。

―やっぱり、飲み会は多いんですか?

熊田:多いですね。弁護士の先生に食事に連れて行ってもらうことも、よくあります。ご飯に行くとか飲みに行くとか、受験生時代にはほとんどできなかったことなので、本当に嬉しいです。もちろん、修習生同士の飲む機会もたくさんあります。

犬飼:皆けっこう飲んでるよね。全然お金ないのに…。

●給費制が復活するも懐事情は「めちゃめちゃ厳しい」

―給費制が復活したとはいえ、やはり懐事情は厳しいんでしょうか?

※給費制:司法修習生に対して国から給与が支払われる制度。2011年までは月額約20万円が支払われていたが、2011年に廃止され、それ以降は無利息で月額18〜28万円の貸付けを受けられる「貸与制」に移行していた。しかし修習生を無給状態に置く「貸与制」には批判の声が強く、2017年に「修習給付金制度」として、給費制が事実上復活した。

全員:めちゃめちゃ厳しいです!

―月に給付されるのは、13万5000円?

鳥山:そうですね。部屋を借りている人は、家賃補助でプラス3万5000円もらえます。

犬飼:東京修習で月17万はきついですよね…正直、全国一律の額ってどうなの?って思います。

馬場:全国一律なのは仕方ないとしても、せめて交通費は出してほしい!地方の修習生は裁判所の近くに部屋を借りられるけど、僕たちは(裁判所の近くは家賃が高いので)それが無理だから…。

熊田:確定申告するとき、交通費を経費で落とせないのもつらい…。

―足りない分はどうしてるんですか?

犬飼:10万円までは無利子で借りられます。あとは、親とか親戚とかに援助してもらったり。

熊田:貯金を切り崩したり。ぎりぎりの生活だよね。

―じゃあ、「修習生は合コン三昧」というわけではない?

犬飼:馬場くんは、よく行ってるよね(笑)

馬場:いや、最近全然行ってない!マジでお金なくて行けない!

犬飼:まぁ皆、合コン行くのが好きっていうか、合コンの話をするのが好きだよね(笑)大学に入学したての新入生みたいなノリ?

熊田:僕はそのノリが楽しいですね(笑)

馬場:予想なんだけど、複数回受験の人の方が、そのノリ強い傾向にない?

全員:ある!

馬場:受かる前が嫌すぎたから…やっと普通に戻れた!っていう幸せがあります。受かる前は働いてるときも何してるときも、勉強しなきゃって気持ちがついてまわってたから…。

熊田:お金がないから働かなきゃいけないけど、勉強時間も確保しないといけないっていうジレンマあって、苦しかったですね。

―鳥山さんは、勉強と仕事との両立はどのようにされてたんですか?

鳥山:僕の場合は勉強がストレス解消になってたんですよね。学生のときにはあんなに嫌だった勉強なんですけど、働きながらやると仕事と違って、やろうがやるまいが自分に返ってくるだけなので、無責任で楽しかったんですよ。なので、予備校に言われた通りにやっていただけですね。

―勉強時間の確保は?

鳥山:平日は仕事があるので、土日にやっていました。予備校のネットの授業を受けていました。

―司法試験まで、仕事は辞めなかったんですか?

鳥山:予備試験に受かったときには辞めることも考えました。でも、社会人の強みは、司法試験に落ちても仕事があるから生活には困らないことだと思って。その心の余裕は持っていた方がいいなと思って、仕事は辞めませんでした。

●嫌なことは「二回試験」「優秀な成績で来てた人が落ちた」

―修習で、大変なことはありますか?

馬場:就活はしんどかったです…企業・事務所あわせて30くらい受けました。

―就活の情報収集はどのようにされていましたか?

馬場:弁護士会が主催している修習生向けの就職説明会に行ったり、ひまわり求人(日弁連が運営している弁護士・修習生向けの求人求職サイト)を見たりしていました。これがいちばんオーソドックスな就活の形なんじゃないですかね。

鳥山:僕は法テラスに内定をもらってるんですけど、法テラスの存在を知ったのは、司法試験に合格したとき送られてきた書類の中にパンフレットが入っていたからですね。

―法テラスに行かれるんですね。 (※法テラス:司法へのアクセスを容易にするため国によって設立された法務省所管の公的な法人)

鳥山:事務所もいくつか応募はしたんですけど、ほとんど書類選考で落ちてしまいました。

―それはやはり「年齢の壁」でしょうか…?

鳥山:それはそうでしょう。自分が採用する側だったら50代のおっさんなんて採らないもん(笑)。事務所の説明会に行っても、説明してるボス弁が30代とかで…逆の立場だったら使いづらいと思いますよ。

―修習で、嫌なことはないんですか?

熊田:嫌なことは、二回試験です。試験はもういいよって思いますね。 (※二回試験:司法修習の最後に行われる試験である「司法修習考試」の通称。この試験に合格しなければ法曹資格を得ることができない。不合格の場合は、次年度の試験を再度受け合格しなければならず、法曹資格の取得が1年先延ばしになってしまう)

―でも、ほとんどの人が受かるんですよね?

熊田:ほとんど受かるからこそ、落ちたときのショックが大きくて。「あいつ落ちたんだって!」って言われそうで怖いです…。

犬飼:どうしたら落ちるか、よくわからないところも不安だよね?

熊田:水ものというか、それまでずっと優秀な成績で来てた人が落ちたりもしてて…ほんと、嫌です(笑)

―修習中、印象的だったことは?

馬場:死体解剖じゃない?

熊田:強烈だったよね。

鳥山:僕は、初めて法廷で被告人を間近で見たときですかね。今までは触れてこなかった、闇の部分を見ているな、と。

犬飼:検察修習で、手錠腰縄をつけられた被疑者を初めて間近で見たときは衝撃を受けました。完全に自由を奪ってる!って。なのに、その光景にもすぐに見慣れてしまったことが恐ろしかったです。

鳥山:それから、少年事件を見ていたときは、何度も泣いてしまいました。自分は高校生の子供がいるので、親の立場にもなってしまって…すごく切なかったです。

●検察は「体育会系」、裁判官は「めちゃめちゃ人間」

―修習を経て、裁判官や検察官へのイメージは変わりました?

熊田:すごく変わりました!法廷で見てた裁判官って、寡黙で余計なことを喋らなくて…ってイメージでしたけど、裁判官室に戻ってきたら色んな話してて。めちゃめちゃ人間だな、って(笑)

―人間らしい裁判官というと、岡口基一裁判官が思い浮かびますが…?

熊田:僕は司法試験の勉強で要件事実マニュアルを使っていました。持っている修習生もたくさんいます。

犬飼:「ブリーフ裁判官」のイメージが強いですが(笑)、権力に屈しない姿には純粋に憧れます!もっともっと発信していってほしいです。

―検察官に対するイメージは?

鳥山:検察修習では、修習生が自分たちで検察官の仕事をするんです。検察官は、それを指導する立場なので「先生」的立場で接するんですよね。なので、裁判官とは見え方が少し違うかもしれませんね。

熊田:検察はやっぱり体育会系でした(笑)。

●「仕事ない」「未修は受かりにくい」への反論

―最近は、「弁護士になっても仕事ないよ」とか「未修は受かりづらいよ」とか、法曹養成に関してネガティブに言われることもありますが…?

犬飼:たしかにそういう話はよく聞きますが、実際に知り合った弁護士は、皆、めちゃめちゃ仕事してるし、めちゃめちゃ稼いでます。

鳥山:「仕事がない」っていうのは、弁護士が1年目から1000万円稼げる時代ではないよ、という意味で言ってるんじゃないかな。

熊田:それに、法曹を目指す人たちって、お金だけを目的にしてるわけじゃなくて、皆、信念があって来ているので…。

犬飼:批判されていることって、合格率とか合格までの時間とか年収とか、物質的な面だけど、司法試験を受けてる側は物質的な面だけ見て目指してるわけじゃないですしね。

●「頑張って良かった」司法試験を目指している人へ

―最後に、これから司法試験を受けようとしている人に、メッセージをお願いします。

熊田:僕は4回目で受かったんですけど、途中で受験をやめて企業に入ろうとしてたときに、先輩に言われたことがあって。「弁護士になったり法曹になったりすることだけが価値じゃない」「どんな仕事をしていても価値は平等で、それぞれがそれぞれの価値を実現しているから、どこに行くかは問題じゃない。でも、法律家になって実現したい価値があるなら続けたら?」って。その言葉をもらって、続けようと思いました。

なのでもし、司法で実現したい価値を持っている人がいたら、ぜひ、目指してほしいです。そうじゃないなら苦しい思いをしてまで続ける必要はないと思います。

犬飼:受験中って精神的に窮屈になることも多いと思うんですけど、ほんと、司法試験が全てじゃないので、できるだけ自由に楽しんで受験してほしいなぁって思います。

馬場:僕も、何回か受けてる人向けになりますが…僕も受験をやめようと思ったことがあって、先に受かった先輩に「もう司法試験やめようと思います」と電話をしたことがあったんです。そしたらその先輩が「元気出せ。俺は今CAと付き合ってて、今から女子アナと合コンだぞ!」って言ってくれたので、「あぁそうなんだ!」と思って頑張りました(笑)。

実際受かってみたら、自分にはそんなことはなかったですけど(笑)。でも修習で色々なものを見させてもらって、今もこうやってインタビューの場にいさせてもらって、日々、自分の目に映るものは新しいので、弁護士という仕事が良いかどうかは人それぞれですが、頑張ってよかったなと思います。

鳥山:司法修習は、とてもいい制度だと思います。司法が国のサポートをすごく受けていること、司法という機能の大事さを、修習ですごく感じました。なのでぜひ、頑張って、まずは修習に来てください!

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