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「無断駐車やめて」提訴、200円の賠償命令…「費用倒れ」でも裁判を起こす意義
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「無断駐車やめて」提訴、200円の賠償命令…「費用倒れ」でも裁判を起こす意義

駐車場に約40分間無断で駐車したとして、土地の所有者が無断駐車した女性に対して損害賠償を求めていた裁判で、大阪地裁(比嘉一美裁判長)が12月14日、女性に200円の支払いを命じたことが報じられた。

読売新聞の報道によると、原告は、女性が2015年3月、大阪府摂津市内の駐車場に軽乗用車を無断で止めたとして賠償を求めた。女性側は「駐車場ではなく空き地」「車を止めても損害は発生しない」と争っていた。判決では「所有者には自分の土地を承諾なく利用されない権利がある」として原告の請求を認めた。200円という金額は、近隣のコインパーキングの料金を参考に算定したという。

原告は弁護士に依頼せず、いわゆる「本人訴訟」の形で裁判を起こした。費用は5000円以上かかったが、「やめてもらうために訴えた」と話しているという。

裁判にかかった費用の方が、勝ち取った金額よりも大きいわけだが、こうした訴訟を起こす意義はなにかあるのだろうか。好川久治弁護士に聞いた。

●「『泣き寝入りは嫌だ』という原告の思いは尊重されてよい」

「訴えを起こす人の気持ちは必ずしも経済合理性だけで説明がつくものではありません。ですから、裁判を起こすこと自体に意味があると考える人にとっては、たとえそれが1円であっても意義があります。現に、『1円訴訟』という裁判は他でも見られます」

好川弁護士はこのように述べる。こうした判決にどんな意義があるのだろうか。

「確かに、今回の裁判は、金額だけを見ると費用倒れになっていますし、『やっぱり駐車料金相当額しか認められないのか』『かえって無断駐車を助長する』という意見もあるかもしれません。

しかし、訴えを起こした人(原告)は、これまで何度も繰り返される無断駐車に悩まされてきたのかもしれませんし、今回はたまたま証拠が容易に集められた1件だったのかもしれません。

本来は簡易裁判所の管轄であるはずの裁判が地方裁判所に移されて審理されているようですし、訴え提起から判決まで1年半も時間がかかっているようですから、この裁判にかける原告の思いが伝わってきます。『泣き寝入りは嫌だ』という原告の思いは尊重されてよいでしょう。

裁判を起こされた人(被告)にとっても、自宅や場合によっては職場に裁判所から『呼出状』が送られてきて嫌な思いをしたかもしれません。

内容が『無断駐車』という穏やかでないものですので、裁判所に行けば被告席に座る姿を傍聴人から好奇な目で見られたかもしれません。

そして、何よりも1年半もの間、裁判に備えて準備をしたり、裁判所に出向いたりして時間をとられたことは相当大きな負担であったと思います。結果が報道されたとなればなおさらです。

その意味で、原告にとっては、裁判を起こし、被告に裁判所への出頭を求め、その結果、裁判所で自らの言い分が認められた意義は大きかったのではないでしょうか」

判決が確定した場合は、今後の影響はあるのだろうか。

「この裁判自体は、『他人の土地に無断駐車をしたので使用料相当額の賠償金を支払え』という単純な事件ですから、それ自体が後の裁判に有利な影響を与えるということはないと思います。

無断駐車に対して事前に『罰金』を警告していたり、慰謝料を請求したりして、それが認められたという事件なら、相当大きな影響があったと思いますが」

弁護士に依頼せず、本人が訴訟するのは珍しいことなのか。

「本人訴訟というのは珍しくありません。むしろ、数のうえでは当事者のいずれかに代理人がつかない本人訴訟の方が多いです。特に、簡易裁判所の事件はほとんどが本人訴訟です。これらのうち一定の割合で判決が出ますので、今回もその一つであったにすぎません」

(弁護士ドットコムニュース)

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

プロフィール

好川 久治
好川 久治(よしかわ ひさじ)弁護士 ヒューマンネットワーク中村総合法律事務所
1969年、奈良県生まれ。2000年に弁護士登録(東京弁護士会)。大手保険会社勤務を経て弁護士に。東京を拠点に活動。家事事件から倒産事件、交通事故、労働問題、企業法務まで幅広く業務をこなす。趣味はモータースポーツ、ギター。

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