腰痛や肩こりなどを抱える人に人気の、整体やカイロプラクティック。街を歩いていると、ここかしこで宣伝を見かけるが、施術の際に強く押されすぎて、客の骨にヒビが入ったり、症状が悪化するなど、深刻なトラブルが起こる場合もあるようだ。
弁護士ドットコムの法律相談コーナーにも、整体でケガをした女性の相談が寄せられている。女性はリラクゼーションを兼ねた全国チェーンの整体店での施術中、背中を強く押され痛みを感じた。痛みが続いたため、整形外科でレントゲンを撮ったところ、肋骨にヒビが入っていることが判明。全治3週間と診断された。痛みで仕事を一週間休んでいるが、派遣社員のため収入は激減した。今後はリハビリも必要だという。
投稿によると、この整体店は「申し訳なかった。確かに押しすぎた」とケガの原因が施術にあることを認めたが、治療費や慰謝料については何も言ってこないという。このような場合、被害者は治療費や慰謝料を請求するために、どう動けばよいだろうか。鈴木沙良夢弁護士に聞いた。
●裁判になれば「施術によるケガ」という証明が必要
「まずは、整体店と賠償について具体的な話をしてみるべきです。もしこの話し合いで整体店と賠償の話になり、女性の側で納得できる金額の提示があった場合、話はそこでまとまります。
この話し合いの時点で、整体店の側に弁護士がついて、相手方の弁護士が交渉の窓口となることもありますが、それでも賠償の話にならなかったり、金額の折り合いがつかなかったりする場合は少なくないでしょうね」
もし、話し合いがまとまらなかったら?
「話し合いの結果、整体店の側で賠償しないという判断になった場合には、女性の側から裁判などを起こして請求をする必要があります」
裁判をおこし、相手を訴える時には、どんな準備が必要だろうか?
「裁判になった場合は、まず裁判所に『整体店側の過失によってケガをしたこと』を理解してもらう必要があります。
今回の件のように、骨にひびが入ることを不全骨折といいます。肋骨は比較的折れやすい部位ですが、もともと折れていたのではなく、整体店の施術によって折れてしまったということを説明して、証明できなければなりません。
そこで、整形外科などにかかったら、しっかりと『診断書』をもらっておきましょう」
女性側としては、治療費の支払いや、仕事を休んだことによる補償もしてもらいたいところだ。
「そうですね。払われるべき賠償金額についても、女性の側で証明しなければなりません。治療費の領収書はとっておいてください。
また、仕事を休んだことによって減った収入の金額の計算書などを提出する必要があるでしょう。そういった計算もしておく必要があります」
体をほぐすための整体店で、ケガをさせられては元も子もないが、万が一こうした目にあってしまったら、必ず診断書や請求書など「目に見える形」の証拠をそろえておこう。