福島第一原発の事故後、入院していた双葉病院(福島県大熊町)から行方不明になった認知症の女性をめぐり、家族が東電に約4400万円の損害賠償を求めていた訴訟で、東京地裁は8月10日、東電に約2200万円を支払うよう命じた。
双葉病院や隣接する老人保健施設には当時、計438人の患者・入所者がいたが、このうち50人が避難する際、体調を崩すなどして、2011年3月末までに死亡している。遺族らが東電を相手に7つの裁判を起こしており、今回は5例目。
判決文によると、原発から4.8kmに位置する双葉病院では、3月12日から16日に計5回に分けて患者を避難させた。行方不明になった女性は当時88歳で、14日夜以降に一人で病院の外に出たとみられる。女性は今も見つかっていないが、失踪宣告(特別失踪)により、法律上は2011年4月6日に死亡したとみなされている。
東電は、女性が見つかっていないため、どこかに保護されている可能性があると主張したが、裁判所は原発の半径20kmに避難指示が出されていたことなどから、「栄養失調または脱水によって死亡することは避けられない」と指摘。「原発事故がなければ、双葉病院から職員が避難することはなく、外出を防ぐことができたと認められる」と東電の責任を認めた。
原告側代理人の新開文雄弁護士は判決後の会見で、「損害賠償のベースとなっている2000万円という金額は、交通事故の死亡慰謝料と一緒だ。親族が遺体を見ていないという事態を考慮しても、プラスアルファがあってもよかったのではないか」と述べた。
東電は「判決の内容を確認した上で、引き続き真摯に対応してまいります」とのコメントを発表した。