懸賞つきパズル雑誌の「読者プレゼント」について、当選者数を水増したり、架空の当選者名を掲載したとして、消費者庁は12月上旬、出版元の会社に対して、景品表示法違反(有利誤認)にもとづく措置命令を出した。
措置命令を受けたのは、月刊誌「クロスワードパクロス」や隔月誌「ナンプレマガジン」などのパズル雑誌を発行している「アイア」(東京都渋谷区)。報道によると、同社は、計8種類のパズル雑誌の読者プレゼントについて、誌上の当選者数を水増していた。昨年1年間の当選者数について、実際の約2倍の計約1万2000人と発表していたうえ、一部では架空の当選者名を記載していたという。
消費者庁は不当な表示を禁じた景品表示法に違反するとして、アイアに対して行政処分をおこなった。同社はウェブサイトで「指摘された事項については真摯に受け止め、二度と同様のことがおこらないよう身を引き締めて参ります。皆様に御迷惑、御心配をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます」と謝罪コメントを公開した。
景品の当選を期待して雑誌を買っていた読者は、怒り心頭だろう。購入者は「雑誌代を返して」などと、出版社に要求することはできないのだろうか。上田孝治弁護士に聞いた。
●返金の請求は難しいが、会社は誠意を示すべき
「今回の雑誌は、パズル雑誌です。もちろん、読者プレゼントへの期待をしながら雑誌を購入している読者も多いでしょう。しかし、基本的には、雑誌でパズルを楽しむという目的が中心ではないでしょうか。
したがって、読者プレゼントの部分は、雑誌掲載のパズルを解くという楽しみを味わった後のおまけ的な要素が強いと思われます。つまり、雑誌という商品の本質的な部分ではないということですね。
読者プレゼントの当選者数が、実際には公表されている数より少なかったとしても、それは雑誌のおまけ的な要素の部分について、一部虚偽があったということに過ぎません。ですから、雑誌代の返金を求めるのは難しいでしょう」
法律違反があったとしても、返金の請求は難しいだろうか。
「はい。今回、景品表示法違反で措置命令が出されていますね。景品表示法は、不当な表示について、誤認の排除、再発防止策の実施、今後同様の違反行為を行わないことなどを命ずるという行政処分です。違反があったからといって、ただちに個別の購入者が返金を求められるわけではありません。
ただ、個人的には、今回の出版元のやり方は、架空の当選者名をでっち上げるなど非常に悪質だと思います。雑誌代全額は難しいとしても、一部返金のような対応が適切ではないでしょうか」
上田弁護士はこのように話していた。