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現代美術家・村上隆さんの作品と似ている?「目玉ロゴ」は著作権侵害なのか
神戸アニメストリートの「目玉ロゴ」(ウェブサイトより)

現代美術家・村上隆さんの作品と似ている?「目玉ロゴ」は著作権侵害なのか

神戸市にあるアニメ関連会社「神戸アニメストリート」のロゴマークが、現代美術家の村上隆さんの作品(例:http://www.kaikaikiki.co.jp/images2/news/news13.jpg)と似ているのではないか――。そんな指摘が村上さん側からあったことがわかり、注目を集めた。同社は12月上旬、目玉の形状をしたロゴの使用を来年3月末で取りやめると、ウェブサイトで発表した。

今年3月にオープンした神戸アニメストリートでは、「アニメ」の「a」の文字を目玉の形状にアレンジしたロゴを使用していた。「ギョロリと視点を変える」というコンセプトだそうだ。

ところが、村上さんが代表をつとめるアート会社「カイカイキキ」から「村上隆氏の作品と誤認のおそれもあるかもしれない」と指摘があった。両者が協議した結果、目玉のロゴの使用を取りやめ、新デザインのロゴに切り替えることになったと、神戸アニメストリートは説明している。

神戸新聞の報道によると、村上さんの代理人は「著作権侵害にあたる」と主張しているという。目玉ロゴは、村上さんの作品の「著作権侵害」にあたるのだろうか。著作権にくわしい柿沼太一弁護士に聞いた。

●アイデアが似ているだけでは「著作権侵害」といえない

「今回のようなケースでは、著作権の『翻案権』が問題になります。翻案権とは、著作物の大枠をそのままに、細かい部分を作り変える権利です。

そして、著作権者に無断で翻案すれば、著作権侵害が成立します」

柿沼弁護士はこのように述べる。どういう場合に、翻案権が侵害されたということになるのだろうか。

「著作権侵害(翻案権侵害)といえるためには、大きく分けると、(1)両作品が類似していること(『翻案』に当たること)、(2)オリジナル作品を元にして制作されたこと、の2つの条件が必要です。

(1)については、さまざまな考え方があるのですが、簡略化していうと、『アイデアベースで似ていても、表現ベースで似ていないのであれば類似ではない』とされています。ただ、アイデアと表現は、はっきり区別されるものではありませんが・・・」

今回のケースでは、どのように考えるべきだろうか。

「神戸アニメストリートの目玉ロゴと村上隆さんの作品は、似ているか似ていないかでいうと、たしかに似てはいます。

ただ、共通している要素は、(a)目玉であること、(b)まつげのようなものがピコッと飛び出していること、(c)黒目の部分に光が反射して少女漫画的な表現になっていること、くらいです。

一方で、(d)村上作品は黒目の部分がカラフルに彩色されているが、アニメストリートのほうは黒目のままであること、(e)両作品ではまつげの飛び出し角度が異なること、(f)アニメストリートのほうはアルファベットの「a」を模していること、などの相違点もあります。

したがって、今回の両作品に共通している部分は、『目玉を鮮明な色で彩色してマーク的に利用する』というアイデア部分だけではないでしょうか。今回のケースでは、著作権侵害とはいえないと思います」

柿沼弁護士はこのように話していた。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

柿沼 太一
柿沼 太一(かきぬま たいち)弁護士 STORIA法律事務所
兵庫県弁護士会所属。専門はスタートアップ(特にディープテック)法務、AI・データ関連法務、知的財産関係事務所サイトではAI、IT、知財、ベンチャー系企業に関する記事を多数掲載。

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