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女性専用アパートで「男性と同棲」する隣人…追い出せないの?
写真はイメージです(yamasan / PIXTA)

女性専用アパートで「男性と同棲」する隣人…追い出せないの?

男子禁制の「女性専用アパート」で、男性と同棲する隣人に悩まされる女性が、弁護士ドットコムに「どんな対応をするべきか」と質問を寄せています。

相談者は「女性専用物件」「男性の出入りNG」との物件情報を気に入り、親名義で、女性専用アパートに1年前から住んでいました。しかし、去年の夏頃から、隣人が男性と同棲していることが分かったそうです。

相談者は壁越しに聞こえる男性の話し声や生活音などに悩み、ストレスからか「身体にも支障をきたしてきた」といいます。

管理会社に連絡し、同棲と騒音について注意するよう求めましたが、男性は立ち退かず、騒音や不快感に悩まされる日々が続いています。そこで改めて、入居時にかわした契約書を確認すると、驚くべきことに入居前の物件情報にあった「女性専用」「男性の立ち入り禁止」などの記載はありませんでした。

相談者は、「隣人が出て行くことが不可能であればすぐにでも引っ越したい」と考えています。今回のケースで、大家と管理会社に対し、「契約違反」だとして、引っ越し費用を請求できるのでしょうか。また隣人に対して、慰謝料を請求することはできるのでしょうか。鈴木軌士弁護士の解説をお届けします。

● 大家と管理会社に「引っ越し代」を請求できる?

ーー相談者は大家と管理会社に引っ越し費用を請求したいということですが、このようなことは可能なのでしょうか。

まずは、大家に請求できるかどうかを考えてみましょう。

大家が管理会社にアパートの賃借人の募集を依頼する時点で、「女性専用物件」「男性の出入りNG」との条件で依頼したのであれば、このような条件が充たされないがために相談者が被った損害(引っ越し費用など)の賠償をする責任があると思われます。

大家が損害賠償責任を回避したいのなら、まずは相談者の隣人に、男性との同棲を解消するよう強く求め、応じなければ、隣人との賃貸借契約を解消するなどの対応をすべきです。このような解決ができない場合、大家は、女性専用を信頼して入居した相談者に対して、損害賠償などの債務不履行責任を負います。

一方、管理会社に対して請求できるかどうか考えてみましょう。

ここで問題となるのは、隣人が入居の際に「女性専用」などの条件を言われていない、つまり隣人と相談者との間で入居条件が異なる場合です。

仮に、相談者より隣人の方が先に入居していたとすると、入居が早かった隣人への条件を、後から不利な条件に一方的に変更することはできず、同棲の解消などは求められません。したがって管理会社は、相談者に引っ越し代などを支払う形で解決するしかないでしょう。

そもそも管理会社は、入居者に対して「女性専用」などの条件を示す際には、それが実現可能な条件なのかどうか考えた上で募集をかけるのが当然です。管理会社に通常の判断能力があれば、相談者に募集条件を提示した時点では、「女性専用」の条件が実現可能なことを前提にしていたはずです。

このような仲介手続の中で調査・判断・伝達ミスなどがあり、その結果、相談者の抱えたトラブルにつながったものと判断される場合には、管理会社は注意義務を果たさなかったとして、大家と同じ責任を負うと考えられます。

## ●「心身にも支障」...隣人に慰謝料を請求できる?

ーー相談者は、隣人の騒音によって「心身にも支障をきたしてきた」といい、慰謝料を請求したいと思っているようです。

隣人が男性と同棲していることによる騒音と、心身の支障との間に因果関係があれば、隣人は損害賠償責任を負うものと思われます。

しかし、アパートなどの共同住宅で生活する上で、多少の騒音を出してしまうのは、いわば「お互い様」です。多少の物音がする程度であれば法定責任を負うことにはならず、騒音が「受任限度」を超えてとても耐えられないレベルに至っていることが必要とされています。

ーー今回のケースは、どのように考えられるでしょうか。

隣人が男性と同棲していることで、女性一人暮らしの場合よりも、生じる「騒音」の程度は上がってはいるでしょう。しかし、この「騒音」が「受任限度」を超える程度にまで至っているのかについては、ケースごとに吟味する必要があります。

本件で、騒音に対して法的責任の追及まで考えられるのは、たとえば、男性が重低音の音楽などを昼夜を問わず大音量で流している、といったような尋常な場合でないケースに限定されると思われます。このような場合には、隣人に、慰謝料などの損害賠償請求をすることができるでしょう。

(弁護士ドットコムライフ)

プロフィール

鈴木 軌士
鈴木 軌士(すずき のりし)弁護士 弁護士法人タウン&シティ法律事務所
専門は不動産だが、不動産等が関係する相続や離婚等も得意としており、扱い事件等も多い。「依頼者の心からの満足」を業務目標として掲げているため、金銭的に解決することはもちろん、メンタル面でのフォローにも最大限努めている。

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