進学や就職をきっかけに住まいを移した人も多いだろう。新しく借りた部屋にも、そろそろなじめたころだろうか。もしかしたら、入居時には想像しなかったトラブルが起きているかもしれない。
たとえば、賃貸マンションに備え付けてあるエアコンが故障した場合、修理代は誰が負担するのだろうか。入居するときにきちんと確認していればいいが、そんなことまで気にして部屋を借りるという人は、決して多くなさそうだ。
エアコンが壊れたというだけでも気が滅入るのに、その修理費をめぐって大家と言い争う、なんてことは避けたいものだ。部屋に備え付けのエアコンが壊れた場合、借りた人が自己負担で修理をしなければならないものなのだろうか。田沢剛弁護士に聞いた。
●「大修繕」は貸主負担、「小修繕」は借主負担というのが一般的
「エアコンが故障して使えなくなってしまった場合、その修理には、ある程度の費用がかかってしまいます。しかし、『自分で使う以上は自分で修理するのが当然』とか、『大家さんに請求するのは気が引ける』などといって、本来ならば負担する必要のなかった費用まで、自ら負担してしまう人が多いのではないでしょうか」
このように田沢弁護士は述べる。では、エアコンの修理費は、貸主と借主のどちらが負担すべきものなのだろう。
「エアコンのような部屋の『付帯設備』の修理費用について、借主が負担するのか、それとも、貸主が負担するのか。この点は、契約書で確かめてみる必要があります」
修繕費をどちらが負担するかは、原則として契約で決まることになるようだ。一般的には、電球の交換や障子の張り替えなど、容易にできる「小修繕」については借主負担、これを超える「大修繕」については貸主負担となっていることが多いという。
●契約時に「修繕義務の範囲」をきちんと確認しておこう
ただ、「大修繕」の範囲に含まれる設備なのに、「借主負担」と契約書に書かれているケースもあるようだが・・・。
「そうしたケースは、貸主が自らの負担を避けるために、借主の無知や弱い立場につけ込んで、本来であれば必要のない負担をさせようとしていることになります。
したがって、費用負担をめぐるトラブルを避けるためにも、契約の際に、借主の『修繕義務』の範囲がどうなっているのか、よく確認したほうがよいということですね」
実際に入居したあとで何かの設備が故障した場合、契約書で「貸主が修繕義務を負う」とされているのであれば、気兼ねなく、不動産仲介業者を通して貸主に修理費を請求すればよいという。
「この点の対応をきちんとしてくれるかどうかでも、その不動産仲介業者がまともな業者かどうか分かります」
エアコンの故障で困っている人は、自腹覚悟で修理業者を呼ぶ前に、賃貸借契約書をもう一度確認してみてはどうだろうか。