2019年04月12日 10時08分

上司のセクハラ、恐怖で誰にも言えず精神疾患に…時効を過ぎたら泣き寝入り?

上司のセクハラ、恐怖で誰にも言えず精神疾患に…時効を過ぎたら泣き寝入り?
写真はイメージです(naka / PIXTA)

「セクハラに時効はあるのでしょうか」ーー。こんな質問が弁護士ドットコムに複数寄せられている。

ある女性は、約3年前に会社内で上司にセクハラを受けた。「(ほかの)上司に言ったら許さないからな」と口止めされ、女性は恐怖のあまり、2年間だれにも打ち明けられなかったという。精神疾患にもなってしまったそうだ。

女性は意を決して、1年前にほかの上司に相談したが、「その後何もないんでしょ?何もないならそれでいいじゃないか」と取り合ってもらえなかったという。

「セクハラをした上司を訴えたいです。時間が経っていると、訴えることは難しいのでしょうか」と女性は不安な様子だ。セクハラには、いわゆる「時効」はあるのだろうか。白川秀之弁護士に聞いた。

●上司への損害賠償請求は「3年以内」に

「違法なセクハラ行為によって、精神的な苦痛をこうむった場合、加害者に対して損害賠償を請求できます」

このように白川弁護士は切り出した。

「損害賠償請求の根拠としては、通常、民法709条の『不法行為』の概念を使います。今回のケースですと、セクハラがこの不法行為にあたりますね。しかし、セクハラをした上司に損害賠償を請求する場合、3年以内に権利を行使しないと、時効にかかってしまいます」

権利の「行使」とは、いったい何をさすのだろう。たとえば、「あなたはこんなセクハラをしたが、出方しだいで裁判に訴える」といった内容証明郵便を相手に送ることは、権利の「行使」といえるだろうか。

「『行使』というためには、訴訟を提起する、といった法的な手段をとることが必要です。単に内容証明郵便で請求するのは『催告』といって、時効の完成を引き延ばすだけの効果しかありません。その間に『行使』をしなければなりません」

つまり、内容証明郵便を送るだけではだめで、相手が請求に応じない場合は、提訴することが必要になるということだ。しかも、3年以内に行動をおこさないといけない。

●証言してくれる人は早めに確保したい

実際、早く動いたほうが、なにかとメリットが多いようだ。

「セクハラによる損害賠償では、被害者がセクハラ行為を立証しなければなりません。時間が経過すれば、関係者の記憶が薄れたり、証拠がなくなってしまう危険性も高くなります。

ただでさえ、セクハラは立証をするのが難しいのに、時間の経過でさらに難しくなるのです。そのため、時効にかかわりなく、早めに請求をすることが望ましいといえます」

とはいっても、精神的にダメージが大きければ、すぐに法的な手段を取ることは簡単でない。

「すぐに請求できない場合は、証言してくれる人を確保したり、された行為を記録するなど、可能な限り証拠を収集しておくべきです」

では、もし3年の時効が過ぎてしまった場合、何か手立てはないのだろうか。

「セクハラの場合、会社の安全配慮義務違反を理由にして、会社に対して損害賠償請求 をすることもできます。この場合には、時効期間は10年になります」

10年のうちならなんとかなりそうだが、それでもやはり、証言の確保やセクハラ行為の記録は早めにやっておくのがいいのだろう。

(弁護士ドットコムニュース)

白川 秀之弁護士
2004年弁護士登録。一般民事事件を幅広く行っておりますが、労働事件を専門的に取り組んでおります。日本労働弁護団常任幹事、東海労働弁護団事務局次長、愛知県弁護士会刑事弁護委員会
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