ネットでの情報交換につきものなのが、ウェブサイトのアドレス(URL)だ。「このサイト見て」「こんな写真があったよ」といった口コミメッセージに添えられたURLをクリックすれば、即座に自分で内容を見ることができる、便利な仕組みだ。
しかし、中には「ロリ」「やばい」「中●生」などと、18歳未満の「児童ポルノ」であることを臭わせるような言葉とともに、URLが書き込まれていることもある。
もしリンク先が児童ポルノに当たる画像や動画だったとしたら、単にURLを書き込んだだけでも、何らかの罪に問われる可能性があるのだろうか。ネット上の性犯罪にくわしい奥村徹弁護士に聞いた。
●児童ポルノ画像のURLを紹介したら「児童ポルノ公然陳列罪」
「見ず知らずの他人がアップした児童ポルノ画像のURLを一部改変して、自分のHPに掲載した行為について、児童ポルノ公然陳列罪の正犯にあたるとした判例(最決平成24年7月9日・最高裁サイト)が出ています」
奥村弁護士はこのように述べる。どんな事案だったのだろうか。
「事案の詳細は、大阪高裁による二審判決(大阪高判平成21年10月23日・判例時報2166号142頁)で紹介されています。概要としては、URLの『bbs』の部分を『(ビービーエス)』と改変したものを掲載して、『漢字は英単語に、カタカナはそのまま英語に、漢数字は普通の数字に直してください』と付記したという事案で、リンクも張られていませんでした」
つまり、直接リンクを張っていないどころか、URL自体が実際のものとは違っていたという。ところが、奥村弁護士によると、大阪高裁は次のように判決文で示して、児童ポルノ公然陳列罪の成立を認めたのだ。
「他人がウェブページに掲載した児童ポルノへのハイパーリンクを他のウェブページに設定する行為は、その行為又はそれに付随する行為が当該ウェブページの閲覧者に対し当該児童ポルノの閲覧を積極的に誘引するものである場合には、児童ポルノ公然陳列に該当する」
ちょっとわかりにくい言い回しになっているが、かみくだいて言えば、直接リンクを張っていない場合でも、「児童ポルノの閲覧を積極的に誘引する」行為であれば、児童ポルノ公然陳列罪に該当するということだ。
奥村弁護士は「最高裁決定の少数意見にもあるように、URLの紹介行為を公然陳列罪とするのはかなり無理のある解釈ですが・・・」と断りつつ、「最高裁も、結論としては、大阪高裁の判決を追認しました」と説明している。
●「URLを紹介するだけで犯罪になる」という判例の衝撃
さらに、この判例の「URLを紹介するだけで犯罪になる」という考え方は、児童ポルノ公然陳列罪にとどまらず、他の犯罪にも適用される可能性があると、奥村弁護士は警告する。
「この判例を前提とすると、流布犯一般(児童ポルノ公然陳列罪・わいせつ電磁的記録記録媒体公然陳列罪、名誉毀損罪、信用毀損罪、著作権法違反等)において、URLの紹介行為が問題となりえます。
すなわち、違法情報が掲載されたウェブページの閲覧を積極的に誘引するためにURLを紹介すると、流布犯の正犯(もとのURLに違法情報をアップした犯人と同等の罪)として検挙される恐れがあるということですので、十分に注意する必要があります」
ポイントは、問題となるウェブページの閲覧を「積極的に誘引」しているかどうかという点といえるが、具体的にはどのような場合に、そう認定されるのか。
「児童ポルノについていえば、児童ポルノ画像のURLに『ロリ』『やばい』『中●生』『JK・JC』などという児童ポルノをうかがわせる説明を添えて書き込むと、児童ポルノとして違法な画像の閲覧を積極的に誘引する意思が認定しやすくなりますので、検挙される危険が高まると思います」
奥村弁護士はこのように説明するが、「違法な画像のURLを紹介するだけで犯罪になる」という判例は、これまでのネットに関する考え方を根底からくつがえす可能性がある。今後、捜査機関による摘発が、児童ポルノ犯罪以外にも広がっていくのか、注視していく必要があるだろう。