連日の猛暑のせいなのだろうかーー。自宅の庭先で全裸になっていた男性(69)が、公然わいせつの容疑で現行犯逮捕される出来事が7月18日、神戸市で起きた。同日の最高気温は35.9度だった。
地元の神戸新聞によると、近隣住民からの通報があったという。警察の調べに対し、男性は「暑かったから」「見せつけるつもりはなかった」と話しているそうだ。
公然わいせつの成立には「故意」が必要だが、捜査機関はどうやって立証していくのだろうか。吉田要介弁護士に聞いた。
●自宅でも全裸はダメなの?
ーー自宅の敷地内でもダメなの?
公然わいせつ罪の「公然」とは、「不特定または多数の人が認識することができる状態」をいい、不特定または多数の人に見られる可能性があれば足ります。
道端は、当然該当しますが、自宅の庭の場合、塀や生け垣などに囲まれていて、あえて覗こうとしなければ、外から見られないのであれば、不特定または多数の人に見られる可能性は低いと思われますので、該当しないと思われます。
逆にいえば、外から、容易に庭の状況が見られるのであれば自宅の庭であっても、該当すると思われます。
とはいえ、実際に逮捕までされるのは、よほどのことだと思います。あくまで推測ですが、今回のケースでは、外の人に声をかけるなど、見られる状況にあったことを認識していた事情や、注意を受けていたのにやめなかったなどの事情があったのかもしれません。
●「見せつけるつもり」は関係あるのか
ーーでは、公然わいせつの故意はどうやって判断するのでしょう?
公然わいせつは故意犯ですから、「公然とわいせつな行為をすること」を行為者が認識している必要があります。
ただし、当該行為とその客観的状況の認識があれば、それがわいせつに該当するのか、公然といえるのかについてまで知っている必要はありません。
すなわち、「見せつけるつもりはなかった」と話していても、自身が全裸であることと、外から容易に庭の状況が見られることを行為者が認識していれば、犯罪は成立します。
なお、塀や生け垣などに囲まれている庭であれば、外からは見られないと思うのが通常です。その場合、仮に地理的要因等で見られる可能性があったとしても、行為者がそのことを認識していなければ犯罪は成立しないと思われます。
ーーこの猛暑ですが、「暑かったから」は通用するのでしょうか?
暑くて全裸にまでならなければ、生命身体に危険が及ぶ可能性があり、全裸になる以外に方法がなければ「緊急避難」として許されますが、そのような事態は考えられませんので言い訳としては通用しないと思われます。