電車内で女性に体液をかけたとして、長野五輪ショートトラック男子500メートルの銅メダリストで、会社員の植松仁容疑者が11月30日、暴行の疑いで愛知県警に逮捕された。
報道によると、植松容疑者は今年4月、名鉄線の車内で、女性の右足に体液をかけた疑いが持たれている。植松容疑者は車内で体液を出したことは認めているものの、「かけるつもりはなかった」と容疑を否認しているという。
植松容疑者は、1998年に開催された長野五輪のショートトラック男子500メートルの銅メダリスト。今回の逮捕容疑は「暴行罪」だったが、体液をかける行為も「暴行」にあたるのだろうか。奥村徹弁護士に聞いた。
●暴行とは、人の身体に対する「有形力の行使」をいう
「暴行罪(刑法208条)の『暴行』は、程度を問わず、人の身体に対する『有形力の行使』をいいます。物を投げつけるような場合も含みますので、他人の着衣に体液を付着させることも『暴行』にあたりうることになります」
ほかの罪には問われないのだろうか。
「そのほかに、器物損壊罪(261条)、強制わいせつ罪(177条)という罪名になることもあります。
器物損壊罪については、物理的にモノを壊すだけでなく、飲食店の食器に放尿する行為など、心理的にモノの効用を侵害する場合も含みます。体液をかけられた着衣を着るのが苦痛だという点をとらえれば、『損壊』と評価される可能性があります。
強制わいせつ罪については、体液を他人の着衣に付着させたケースでの裁判例がいくつもあります。『わいせつ性』は認められる可能性があります。
ただし、強制わいせつ罪における『暴行』は『被害者の意思に反してわいせつ行為を行うに足りる程度の暴行』とされて、ある程度の強度を要するとされています。
体液をかけるというだけでは、強制わいせつ罪の『暴行』として弱い場合もありえます。今回の事件で、強制わいせつ罪でなく、暴行罪で検挙されたのは、そういう点を配慮したものだと思います」