コインパーキングの運営会社に代わって、駐車場を不正利用した人と違約金の支払いの交渉をおこなったとして、京都市の駐車場管理会社の社長ら4人が1月中旬、弁護士法違反(非弁活動)の疑いで京都府警に逮捕された。
報道によると、社長らは2016年3月、別の会社が運営する京都市内のコインパーキングで、利用規約を越える48時間以上駐車した利用者に対して、10万円の違約金を支払うよう請求した。さらに、交渉のすえに、和解金名目で2万4000円を振り込ませたという。
弁護士以外が報酬を得る目的で、代理などの法律事務をとりあつかう「非弁活動」は、弁護士法で禁じられている。駐車場の違約金回収を請け負った業者を同法違反容疑で摘発するのは、全国初めてということだ。どんなことが非弁活動になるのだろうか。そもそもなぜ禁止されているのだろうか。正木健司弁護士に聞いた。
●「非弁活動」とは?
「弁護士、または弁護士法人ではないものが、法定の除外事由もないのに、報酬を得る目的で、反復継続して、一般の法律事件に関する法律事務をとりあつかったり、一般の法律事務のとりあつかいの周旋(=仲介)をおこなったりすることが、禁止されています(弁護士法72条)。
これが『非弁活動の禁止』です。たとえば、報酬を得る目的で、交通事故の示談交渉や、アパートの立退交渉を反復継続しておこなうことなどがあります(ただし、保険会社は、交通事故の示談交渉ができます)。
また、弁護士が、このような非弁活動をおこなうものと結託することを禁止し、非弁活動が助長されることがないようにしたのが、『非弁提携の禁止』です。
弁護士や弁護士法人が、非弁活動をおこなうものから事件の周旋を受けたり、彼らに自己の名義を利用させたりすることも禁止されています(同27条)」
●「非弁活動」が禁止されている理由
なぜ「非弁活動」は禁止されているのだろうか。
「弁護士は、基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命としています(弁護士法1条)。
さらに、ひろく法律事務をおこなうことをその職務とすることから(同3条)、弁護士には厳格な資格要件が設けられています。また、その職務の誠実適正な遂行のため必要な規律に服するものとされています。
資格を持たず、何らかの規律にも服しないものが、自己の利益のため、みだりに他人の法律事件に介入することを業とする行為を放置すれば、当事者や関係者などの利益を損ねかねません。
また、法律生活の公正かつ円滑な営みを妨げ、ひいては法律秩序を害することになります。そのために、こうした行為を禁止する必要があるのです」
非弁活動に例外はあるのだろうか。
「ただ、弊害を防止するためには、自己の利益を図って、みだりに他人の法律事件に介入することを反復継続するような行為を取り締まれば足ります。
だから、たまたま縁故者が紛争解決に関与するとか、知人のため好意で弁護士を紹介するなど、社会生活上、当然の相互扶助的協力というべきことは、取り締りの対象とされていません」