匿名で運用しているのに、ツイッター上で本名を呼びかけてくる「リアル」の知人に憤るツイートが話題になった。
投稿者は、ツイッターを匿名で運用しているが、投稿者の本名など個人情報を知る「リアルの知人」が実名で呼びかけてきたのだという。投稿者は「インターネットの怖さを知らない連中」と憤り、ブロックすることを検討しているという。
この投稿に対しては、「年賀状を出したいという理由で、本名と住所をツイッタ―上に投稿された」「漢字でフルネームを投稿された」など、同様の体験をしたという声が寄せられていた。
2015年の総務省の調査によると、ツイッターを実名で利用しているのは23.5%。8割近くが実名以外の名前で運用しているようだ。
ツイッター上で、個人情報を公開していないアカウントについて、名前や住所などを不特定多数が閲覧できる形でリプライなどの投稿をすることは、法的に問題はあるのか。影島広泰弁護士に聞いた。
●プライバシー侵害の可能性が高い
「 氏名や住所などを、不特定多数が閲覧できるリプライなどの形で投稿をすると、それまで匿名という前提で行ってきた投稿が誰のものか公に明らかになったり、誰と誰が『友達』なのかが明らかになったりします。また、投稿した住所が自宅の住所であれば、自宅の住所が公開されることにもなります。
このような情報を公開することは、以下のようにプライバシー権を侵害することになる可能性が高いといえます」
影島弁護士はこのように指摘する。具体的にはどのような場合なのか。
「事実を公開したことが、プライバシー権を侵害するか否かに関して、三島由紀夫氏のモデル小説『宴のあと』事件の判決が参考になります。
判決は、まず、プライバシー侵害が成立するには、公開された内容が次の3つの要素を含んでいる必要があるとしました。
(1)私生活上の事実または私生活上の事実らしく受け取られるおそれのあることがらであること
(2)一般人を基準として考えたときに、公開を欲しないであろうこと
(3)一般の人々に未だ知られていないことがらであること
その上で、その公開によって、公開された人が不快・不安の念を覚えた場合には、プライバシー権を侵害するとしました」
匿名でツイッターを運用している人の氏名や住所などを、リプライなどで投稿する行為はこれにあてはまるのか。
「匿名という前提で行ってきた投稿の中には、(1)から(3)を満たすものが存在する可能性があることがわかります。
例えば、仕事上は真面目な人間で知られた人が、ツイッター上でのみ、一般には理解されない特殊な趣味について発信していたというケースを考えてみましょう。
こうしたケースで、本人の名前など個人情報が公開されたケースを考えれば、それらが(1)私生活上の事実であり、(2)一般人であれば公開を欲せず、(3)一般の人々に知られていない事実であることがお分かりいただけるものと思います。
また、そもそも、自宅の住所そのものがプライバシーであると考える人も多いのではないでしょうか。
以上から、匿名で運用している人の氏名や住所などを投稿すると、プライバシー権を侵害する可能性が高いので、注意が必要です」